経団連は18日、「理工系人材育成戦略の策定に向けて」と題する提言を公表した。提言は、昨年11月に文部科学省が策定した「国立大学改革プラン」において、「理工系人材育成戦略」を今年度内に策定予定であることを踏まえ、理工系人材育成に関わる産業界の考え方を取りまとめたもの。
同提言は、次の七つの項目で構成されている。
第一は、大学の機能分化と特色ある教育の実践である。わが国の大学・大学院は、再編・統合を伴いながら、「研究重点型」「教育重点型」「地域貢献重点型」等への機能分化がなされるべきであり、おのおのの強みを活かした特色ある研究・教育を行うことが必要と指摘。その際、情報公開も進めるべきとしている。
第二は、教育内容の充実と質保証である。わが国の大学・大学院教育の教育水準の現状に鑑みれば、国際的な質保証を視野に入れた制度設計を進め、海外の大学・大学院との連携、外国人教員並びに学生の招聘等によって国際的通用性を高めることが求められると主張している。教育内容については、産業界出身者の意見を取り入れる仕組みの構築も求めている。
第三は、若手の育成を目的とした継続的施策の実施である。提言では、諸外国の取り組みを参考に、若手の有望な研究者が自らの発意と才覚で研究にチャレンジできる支援のための継続的なファンディングの充実が不可欠と強調している。
第四は、女性理工系人材の発掘・確保である。わが国の理工系は、男性比率が圧倒的に高いが、革新的イノベーション創出に向けてはダイバーシティの確保が重要であり、今後、女性理工系人材の充実に向けた政策的な取り組みが必要としたうえで、産業界も女性研究者が活躍できる環境整備や採用を積極的に行っていく必要がある旨、記している。
第五は、産業界との連携・対話の強化である。理工系人材の多くは産業界で活躍することになるため、産学での連携・対話が不可欠であり、産業界としても、大学への情報発信とともに、大学への企業人講師派遣、中長期インターンシップの充実、あるいは成果を出した理工系人材への適切な処遇等が必要と述べている。
第六は、初等中等教育における理数科目の関心の向上である。理数系に優れた教員の育成、生徒の関心を引きつける魅力ある授業づくりなどに加え、トップレベルの日本人研究者が科学技術の意義、素晴らしさ、面白さを若者に伝える場を増やすことも必要と指摘している。
第七は、重要な国家戦略としての推進である。理工系人材育成は、文部科学省の局を超えた取り組みに加え、総合科学技術会議・産業競争力会議と連携した政策推進を行うべきと強調している。
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経団連では、今後もわが国の理工系人材育成について、政府や教育機関と連携を取りながら、あるべき姿を検討していく予定である。
提言の全文はホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/013.html)を参照。
【産業技術本部】