このほど、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)でエネルギー・気候変動問題を統括するフィリップ・ジュベール上級顧問(世界有数の重電メーカーである仏アルストム元社長)が来日した。この機会をとらえ、経団連環境安全委員会のWBCSDタスクフォース(山口慶剛座長)は3月20日、東京・大手町の経団連会館に同氏を招き、エネルギー・気候変動問題への産業界としての対応などを中心に意見交換を行った。
ジュベール上級顧問の説明の概要は次のとおり。
■ 気候変動問題への対応の緊要性
地球温暖化を防止するためには、世界全体の二酸化炭素累積排出量を一定程度に抑制する必要がある。
WBCSDでは、産業界から解決策を提示していく観点から、2020年までに講じるべき対策として「アクション2020」を策定し、とりわけ(1)二酸化炭素回収・貯留(CCS)(2)ゼロ排出に向けた都市の電化(3)遠隔地域の低炭素化・電化(4)吸収源としての森林利用促進(5)インフラの強靭化――という五つの特定分野について、加盟企業に具体的な行動を取るよう促している。
■ 自然災害への適応策
世界各地で多発する自然災害は、企業の事業活動を分断するリスクをはらんでいる。
例えば電力部門は、資源調達から発電、送配電を経て、消費者への電力供給までのバリューチェーンを構成しているが、自然災害はこうしたチェーンに対するリスクとなっている。いかに電力部門ほかインフラを強靭なものとするかは、極めて重要な課題である。
国際エネルギー機関(IEA)は、温暖化によって欧米各国で夏場の電力需給が逼迫するリスクを指摘している。自然災害への適応策を講じる際には、リスクと費用・便益を分析し、どのような対策が効率的・効果的か見定める必要がある。
■ WBCSDの今後の取り組み
今年から来年にかけては、気候変動首脳会議(14年9月)や国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21、15年12月)ほか、気候変動にかかる重要な国際会議が予定されている。
WBCSDとしては、こうしたスケジュールも見据え、国際的な合意形成に少しでも寄与するため、「アクション2020」に基づき、国際社会に対して建設的な提案を行っていく。
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WBCSDは、1992年のリオ地球サミットに対応するかたちで、世界各国の経済人が集まり設置された国際経済団体。現在、世界38カ国から日本企業20社を含む141の企業が加盟しており、国連気候変動交渉などに影響力を有している。
【環境本部】