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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年4月3日 No.3172 21世紀政策研究所が第105回シンポジウム開催 -「国際競争力の源泉としての物流・流通システム」/アジアにおけるイノベーションの創出に向けて

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は3月19日、東京・大手町の経団連会館で、第105回シンポジウム「国際競争力の源泉としての物流・流通システム-アジアにおけるイノベーションの創出に向けて」を開催した。

■ 対談

シンポジウムの冒頭で、瀬戸薫・ヤマトホールディングス会長と深川由起子・21世紀政策研究所研究主幹(早稲田大学政治経済学部教授)が「わが国の物流・流通システムとその将来的可能性」をテーマに対談を行った。

深川氏は、かつて生産拠点であったアジアが近年では重要な消費市場へと変化を遂げている点を指摘したうえで、今後、産業の国際競争力は、物流・流通システムが企業と消費者とを結ぶサプライチェーンとしての機能をどの程度発揮できるか、という点に大きく左右されることになるだろうとの見解を示した。加えて、物流システムがこうした機能を果たすためには、積極的にITを取り入れながら物流の可視化を図ることが必要と指摘した。

これを受けて、瀬戸氏は、ヤマトグループとしては、サプライチェーンとしての物流の観点から、特に個人や中小企業に対しても、物流・宅配・IT・決済を包括したプラットフォームの提供を目指していると説明した。さらに、製造業における部品の調達などにおいては、部品が納入されるタイミングや量のコントロールが重要になってくるため、ITの活用がますます重要になってくるとの考えを述べた。

次に、深川氏はヨーロッパの物流ハブの役割を担うオランダを例に挙げたうえで、沖縄について、その地理的優位性の観点から東南アジアに対する物流ハブとしてのポテンシャルが高いと指摘した。そして、その競争力を一層強化していくためには、官民の協力によってさらなるイノベーションを導いていく必要性があるとした。

この点について瀬戸氏は、沖縄にサービス・パーツや修理の拠点を設置することにより、アジア各地でビジネスを展開する企業が、沖縄という一拠点で在庫調整を行いながら各地域からのニーズに速やかに対応できるようになるため、コスト面での恩恵も期待できると述べた。

■ パネルディスカッション

続いて行われた「物流・流通システムによる価値創造とアジアへの展開可能性について」と題するパネルディスカッションでは、深川氏がモデレーターを務め、邱純枝・台湾宅配通董事長、岡田晃・全日本空輸常務取締役執行役員貨物事業室長、長尾裕・ヤマト運輸常務執行役員がパネリストとして登壇した。

邱氏は、台湾宅配通の宅配サービスとともに、台湾の宅配産業の概要について説明。台湾では、近年、eコマース普及とともに年平均20%の成長率で宅配需要が伸びており、この需要は、今後とも、日本と台湾をつなぐサプライチェーンの成長のなかで継続的に伸びていくとの見通しを示した。

これを受けて、長尾氏と岡田氏は、日本国内で培ってきた物流にかかわる技術・経験のアジアへの展開について、それぞれの見解を示した。

長尾氏は、ヤマト運輸では、国内で普及させた宅急便サービスを順次、海外で展開してきたが、今後は、すでにサービスを展開している諸地域をつなげる段階に新たに入りつつあると述べた。

また、岡田氏は、全日本空輸は沖縄を2009年から物流ハブとして活用してきており、今後も農畜水産品などのエクスプレス需要が拡大していくことを指摘。そのうえで日本で唯一、旅客機と貨物機を有するコンビネーション・キャリアとして、国内・国際のネットワークをフルに活用しながら物流のボーダレス化を推進していくとした。

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シンポジウムの詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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