経団連の日本・香港経済委員会(芦田昭充委員長)は3月26日、東京・大手町の経団連会館で第33回日本・香港経済合同委員会を開催した。日本側からは、芦田委員長はじめ9名が、香港側からは、香港・日本経済委員会のジョナサン・チョイ委員長はじめ10名が参加した。
今回の会議では、(1)上海自由貿易試験区(2)循環経済と未来型都市の開発(3)リバースイノベーション――の三つのテーマを取り上げて議論し、互いの理解を深めた。議論の概要は次のとおり。
1.上海自由貿易試験区
上海自由貿易試験区とは、経済構造改革を進める中国が、雇用吸収力の大きい金融・サービス分野の振興とグローバル水準の投資環境の整備を目指すために、国務院の承認を経て、昨年9月に上海の四つの保税地区に設けたものであり、投資前の内国民待遇の付与をはじめ、投資・貿易・行政・金融の4分野で各種規制の緩和や手続きの簡素化を認めている。日本企業としては、これまで外資による投資が制限されていた業種、特に旅行、ゲーム、医療分野への進出に関心がある旨を説明した。また、世界最大の人民元のオフショア市場である香港の知見が活用できる金融分野で、日本・香港相互の協力の可能性が高いとの点で双方は一致した。
2.循環経済と未来型都市の開発
中国が第12次5カ年計画のもとで進める内陸部の都市開発において、日本企業が有する優れた防災関連技術や産業廃棄物のリサイクル技術を活用し、香港の開発事業者と連携する可能性が高いことについて一致した。
3.リバースイノベーション
リバースイノベーションとは、先進国の知的財産を利用して、新興国でイノベーションや新しいサービスの開発を進めることを意味する。このコンセプトについて、日本側は香港側の関心を喚起し、中国でのイノベーションを取り込んでいくうえで、製造業の盛んな深セン地区を後背地とする香港と日本とが協力することの意義を指摘。一方香港側から、中国との知的財産権取引については、長年の経験を有する香港にまず関連会社を設けて管理を行うことが、中国での摩擦を回避するうえで有効であるとの意見があった。そのほか、中国市場を対象としたインターネットを活用する新たな販売方式や、養殖を含む日本産食品の加工で香港のニーズに即した開発等で協力の可能性が高いことで一致した。
なお最後に、双方の委員長は、今回の合同委員会を総括し、極めて重要なテーマについて有益な意見交換ができたことを評価するとともに、今後、その成果を具体的な日本・香港間のビジネスに結びつけることが重要であることを指摘した。
【国際協力本部】