経団連の企業行動委員会(大宮英明委員長、三宅占二共同委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、NPO法人J-Winの内永ゆか子理事長から、経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメントをテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
■ ダイバーシティは重要な経営戦略
世界中でビジネスモデルの変化のスピードが高まるなか、過去に強固な成功体験がある人々には、発想の転換が難しい。ダイバーシティが企業の経営戦略として掲げられているのは、多様性が企業組織の活性化やイノベーションの創出に大いに有効であり、グローバル化や顧客ニーズの多様化に対する解決策として認識されているからである。ダイバーシティには外国人などの活用も含まれるが、最もバックグラウンドの近い日本の女性の活用をまず実現することが、全体のダイバーシティの実現につながる。
■ ダイバーシティ推進上の課題
女性のキャリア・アップを阻害する要因は、(1)将来像がみえないこと(2)仕事と家事・育児とのバランスが取れないこと(3)オールド・ボーイズ・ネットワークの存在――の3点に集約される。
まず、「将来像がみえないこと」については、ロールモデルの不在が原因であるため、女性ネットワークの構築、メンタリング、シャドウ・プログラムの実施等が有効である。女性に対しては、「一度キャリアを目指したら、途中であきらめるな」と言いたい。
「仕事と家事・育児とのバランス」については、働き方を見直し、時間と場所の制約から解放することが必要であり、テレワークの導入などが考えられる。ただし、その前提として、業務プロセスの見える化、個々人の業務責任範囲の明確化、業務成果に基づいた評価システム等が必要となる。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は、男性の暗黙知の総称として使っている。例えば、よく「女性ははっきりとものを言いすぎる」と言われることがあるが、それは女性だからではなく、言い方を訓練されていないだけだと思う。男性であれば、ものの言い方は早い段階で教えてもらえるという意味で、オールド・ボーイズ・ネットワークは確かに存在し、女性にはトレーニングが必要ということを理解してもらいたい。メンター制によるトレーニングが一つの解決策と考えられる。
■ Diversity is the game changer
ダイバーシティを推進するうえで、重要なのは経営トップの考え方である。経営トップが、ダイバーシティを経営戦略として明確化することが重要であり、戦略である以上、数値目標および、その指標(KPI)を設定し、PDCAサイクルをまわすことが必要である。
J-Winでは、企業で選抜された候補者に対し、女性管理職としてのトレーニングを行うとともに、企業をまたいだネットワークの構築を行っている。こうした取り組みを通じて、企業でのダイバーシティ・マネジメントの実現に向けて、支援していきたい。
【政治社会本部】