経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)は3日、東京・大手町の経団連会館でOECDのあり方に関するシンポジウムを開催した。開会あいさつにおいて斎藤委員長は、2月に経団連が公表した「グローバル化時代のOECDのあり方に関する提言」を紹介した。続く基調講演で木原誠二外務大臣政務官は、グローバル化が進展するなか、(1)OECDは非加盟国との協力を進めるとともに、G20等のグローバルな経済フォーラムでの議論に貢献することが必要(2)わが国は健康、医療、防災、エネルギー等の課題解決先進国として、OECDを通じてベストプラクティスの普及やルール策定に関与することが重要――とした。
続いて行われたパネルディスカッションの概要は次のとおり。
■ OECDルールと公平な競争条件の確保
(1)多国籍企業行動指針、輸出信用アレンジメント等の既存のOECDルールの最近の動向(2)税源浸食と利益移転(BEPS)への対応(3)国有企業との競争条件(4)サイバー空間の規律(5)個人情報保護の政策調和――などOECDで行われる議論の動向が紹介された。いずれも事業環境を左右する、わが国企業にとっても影響の大きい課題であることが確認された。また、わが国政府・経済界の課題として、(1)ルールづくりの初期段階からの関与(2)労働界やNGOも交えたルールづくりのメカニズム、ダイナミズムへの理解(3)10年先を見据えたアジェンダの設定(4)各種フォーラムでのルールづくりに関与する人材の育成――などが指摘された。
■ 貿易の自由化推進とOECDの役割 ― 付加価値貿易統計を素材に
顧客ニーズに対応する最適な供給ネットワークを追求する結果、将来的には「全世界が工場になる」可能性もあるなか、円滑な事業活動の推進のためには、関税の撤廃のみならず、アフリカなど途上国のインフラ整備支援等が重要な課題となるとの指摘があった。また、そのような生産工程の細分化・地理的分散という実態をより正確に反映する統計として付加価値貿易統計が紹介され、付加価値貿易データベースを持つOECDへの期待として、(1)国際産業連関表の対象国の途上国への拡大(2)企業特性を勘案した作表(3)通商政策と他の政策との連携を可能にする付帯情報(雇用統計等)の拡充――が挙げられた。さらに、アグロフード・ビジネスを例にアフリカ諸国の国際的サプライチェーンへの統合が紹介されるとともに、OECDへの期待として、付加価値貿易統計の整備・分析・政策への応用に加え、政府援助の効果分析、インフラ開発のための制度設計等が指摘された。
【国際経済本部】