経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(川村隆委員長)を開催し、中央教育審議会(中教審)会長の安西祐一郎日本学術振興会理事長から、グローバルに活躍する主体性をもった人材を育成するために求められる施策について説明を聞くとともに懇談した。
■ グローバル人材に求められる主体性
安西氏は冒頭、「グローバル人材に求められる素質・能力にはさまざまあるが、最も重要なことは自らの頭で考え行動することである。グローバル人材は必ずしも、海外で活躍する人だけを指すのではなく、国内においても、グローバルな視野から主体的に考えて行動できる人材はグローバル人材である」と指摘、「大学だけでなく、日本の教育の全段階で、グローバル人材の育成に向けた取り組みを強化する必要があり、文部科学省もスピード感をもって教育改革に取り組んでいる」と述べた。
■ 主体性をもった人材を育成するために求められる取り組み
続いて、中教審の大学分科会や高大接続特別部会、高等学校教育部会等における議論を踏まえ、主体性をもった人材を育成するために求められる取り組みとして、第一に、「大学教育の質的転換が必要であり、大学教育を通じて、ディスカッションをする力や、初めて会ったメンバー同士でもチームを組んで協力し、目標を達成するチーム力を育む必要がある」と述べた。
第二に、「高校への進学率が向上し多様なコース選択を可能とする高校が増えた結果、高校では必修科目も減り、少子化により大学への進学も相対的に容易になったことから、学力中間層の学習時間は10年前に比べて半減している」と指摘、「現在、中教審で検討している達成度テスト・基礎レベルの導入などを通じて、高校修了段階で求められる基礎的科目・教科に関する最低限の学力を保証することが必要である」との認識を示した。
第三に、「大学入学者の選抜方法を、知識偏重ではなく、大学教育を受けるために必要な主体的に学び考える力を評価するものに改革することが求められる」と述べ、「中教審では、大学入試センター試験に代わる達成度テスト・発展レベルの内容について、知識技能の活用力を測るOECD・PISA型のテストや、教科の内容を融合した合科目型・総合型試験の導入など、種々検討している」と説明した。
最後に、現在安西氏が座長を務め、企業6社と5大学(注)が参加して、大学で企業人が講師を務める実践講座を行っている「Future Skills Project研究会」の活動などを紹介し、「有為な人材を育成するためには、企業と大学が協働して教育に取り組むことが不可欠である」と訴えた。
(注)アステラス製薬、資生堂、サントリーホールディングス、日本オラクル、野村證券、ベネッセコーポレーション、青山学院大学、上智大学、東京理科大学、明治大学、立教大学
【社会広報本部】