1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2014年6月5日 No.3179
  5. 産業技術政策の課題と今後の方向性聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年6月5日 No.3179 産業技術政策の課題と今後の方向性聞く -産業技術委員会

経団連の産業技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正共同委員長)は5月19日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、経済産業省の安永裕幸大臣官房審議官から、産業技術政策の課題と今後の方向性について、産業構造審議会産業技術環境分科会研究開発・評価小委員会の中間取りまとめ(素案)に沿って説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

わが国の産業は、(1)企業における中長期的研究投資の減少(2)企業のオープンイノベーションの遅れ(3)新技術の市場投入の遅れ(4)技術シーズ創出力の低下(5)イノベーションを担う人材基盤の弱体化――といった深刻な課題を抱えている。国際競争力強化のためには、これらの課題を克服するイノベーション・ナショナルシステムの改革が必要である。

■ 橋渡し機能の強化

改革にあたっては、革新的技術シーズを迅速に事業化へとつなぎ「橋渡し」するシステムの抜本強化が求められる。

具体的には、産業技術総合研究所(以下、産総研)について、ドイツのフラウンホーファー研究所等の事例も参考に、その主要ミッションが「橋渡し」であることを明確化し、(1)「橋渡し」研究開発の強化(2)「橋渡し」につながる目的基礎研究の実施(3)戦略的な知財管理――等が考えられる。

これまでの成功事例であるスピントロニクスやSiCパワーデバイスの事例等をみても、産総研の優れた目的基礎研究の技術シーズを、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトや共同研究等を活用して徹底的に企業の研究開発に結びつけたことがカギとなっている。

そこでNEDOをはじめとする国の研究開発プロジェクトのマネジメントの抜本的改革と強化も重要となる。(1)長期的技術戦略の策定と中長期の産業競争力強化や雇用拡大に資する重点分野への政策資源投入(2)アメリカ国防総省・国防高等研究計画局(DARPA)の例等を参考に、プロジェクト・マネージャー(PM)による柔軟・機動的な研究開発マネジメント(3)事業化に最大限結びつけるための国の関与――等が考えられる。

また知的財産の取り扱いや評価、中堅・中小・ベンチャー企業への支援の観点も含めて考えるべきである。企業におけるオープンイノベーションの強化、産学連携をすすめる大学のあり方の見直しも必要である。

■ 技術シーズ創出力の強化

優れた技術シーズ創出のためには、大学等の本来の役割である基礎研究の強化が重要である。多様かつ独創的な基礎研究推進や、産業競争力強化、新産業創造に資する技術シーズ創出のための仕組みづくりが必要となる。

■ 人材育成・流動化

「橋渡し」機能を担う研究開発マネジメント人材やイノベーション創出を担う研究人材の育成・活用のほか、理工系人材の裾野拡大も欠かせない。具体的には、大学と公的研究機関の研究者のクロスアポイントメント等を進めるための共済制度等の整備が重要となる。また、女性研究者の活躍拡大等も求められる。

■ 諸外国のシステム

ドイツは中小・中堅企業クラスにオンリーワンの技術を持つ企業が多い傾向があり、全ドイツに67カ所あるフラウンホーファー研究所が、企業の応用開発を担っている。また、主要な研究者は大学教官との兼任である。

アメリカでは、DARPAが、ハイリスク・ハイインパクトな研究開発へ資金の支援を行い、PMに大幅な権限・裁量を付与し、柔軟性・機動性の高い研究開発マネジメントを行っている。

これら諸外国のシステムを参考に、わが国の特性を踏まえたイノベーション創出システムの構築に取り組むことが現在の喫緊の課題である。

【産業技術本部】

「2014年6月5日 No.3179」一覧はこちら