経団連(榊原定征会長)は18日、都内で甘利明内閣府特命担当大臣(経済財政政策)との懇談会を開催した。内閣府からは甘利大臣、西村康稔副大臣、小泉進次郎大臣政務官ほか幹部らが、経団連からは榊原会長、岩沙弘道審議員会議長をはじめ、副会長らが出席した。
冒頭、榊原会長は、「安倍政権の発足から約1年半、日本経済は経済指標が軒並み改善し、デフレからの脱却も近づきつつあるなど、大きくかつ確実な変化が生じている」と指摘。また、「骨太方針」ならびに「日本再興戦略」の改訂の素案において、経済界の要望が多く取り入れられた点を高く評価した。そのうえで、「今こそ政治と経済界が二人三脚で、日本の再興に向けて取り組んでいかなければならない」との考えを示した。
続いて甘利大臣から、「骨太方針」ならびに「日本再興戦略」の改訂について説明があった。そのなかで、「さまざまな政策を実行するうえで、政策効果を高めるためにも、デフレ脱却が重要である」「『日本再興戦略』の改訂では、日本の『稼ぐ力』つまり収益力を高めることを目標に、農業、労働、医療などの分野において、これまでタブーとされてきた課題のすべてに取り組むこととした」「今後とも経済界と連携し、経済の好循環を回すことで、日本経済を再生させていきたい」といった発言があった。
■ 懇談
続く懇談では、榊原会長から、(1)法人税改革(2)エネルギー政策(3)社会保障・税一体改革(4)TPP(環太平洋経済連携協定)――の四つの政策課題について、経団連の基本的考え方を説明した。
これに対し甘利大臣は、一点目の法人税改革に関して、アベノミクスによる税収の上振れも活用しつつ、実質的な減税を実現することが重要と明言。アベノミクスによる構造改革の成果は恒久財源に近い性格があることを強調した。
二点目のエネルギー政策に関しては、世界一厳しい安全基準をクリアした原子力発電所は、立地地域の理解を得つつ、再稼働を順次進めていくべきだと述べた。また、固定価格買取制度については、新エネルギーの導入促進を図りつつも、買取価格は随時、適正な水準に見直していくとの考えを示した。
三点目の社会保障・税一体改革について、来年10月からの消費税率の10%への引き上げは、安倍総理が今年7―9月期の経済状況等を慎重に見極めつつ、年内に判断することを説明。また、社会保障給付の重点化・効率化については、医療情報のICT化や「見える化」を進めることで、重複受診の削減や健康増進を図り、医療費を抑制していくことが可能になると述べた。
四点目のTPPについては、日米間の交渉は8合目まで進展したこと、オーストラリア、メキシコなど他の10カ国との交渉を重点的に進めていることを強調。また、年内の交渉妥結が重要との見方も示した。
このほか経団連側から、「法人税減税の代替財源については、事業環境の国際的イコールフッティングの観点から検討すべき」「TPP交渉を梃子として、他の経済連携協定の交渉についても、担当大臣の強力なリーダーシップのもと推進していただきたい」「社会保険料負担の上昇が企業活動にブレーキをかけることのないよう、税と保険料の一体的見直しが不可欠」「人口減少に直面する日本においては、アジアの人材を活用することを検討すべき」「企業のみならず国民、大学などの国際競争力を強化することや、経済成長を加速する科学技術イノベーション政策に取り組むことが重要」「スマートシティ、スマートエネルギーなどに共通する『スマート化』は、日本のブランド・強みであり、これを世界に向けてアピールすることが重要」などの発言があり、活発な意見交換が行われた。
【経済政策本部】