経団連は1日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(小林喜光共同委員長、佐藤義雄共同委員長)を開催し、長嶺安政外務審議官、田中繁広経済産業省通商政策局通商機構部長(当時)から、日EU経済連携協定(EPA)交渉の現状と見通しについて説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 安倍首相の訪欧の意義と交渉の現状=長嶺外務審議官
6月25日、欧州委員会(EU)から日本政府に対し、交渉開始1年後のEU側による「見直し」の議論が終了し、交渉を継続することとなった旨連絡があった。日本側としてこれまで真摯に交渉を重ねてきたことに加え、欧州要路への高いレベルでの、また在外公館を通じた働きかけ、業界同士の対話を中心とする経済界の取り組み等が全体として効果を上げた結果といえる。特にEUの「見直し」の最中に安倍首相が訪欧し、EUおよび加盟国首脳に対して「2015年中の大筋合意を目指したい」との考えを伝えるなど早期締結への強い意欲を示したことは大きな意義があった。
今後、第6回交渉会合が7月第2週に予定されている。わが国としては、EU側の鉱工業品の高関税の撤廃によって欧州市場における競争条件を速やかに改善するとともに、欧州市場においてわが国企業が直面している規制上の問題について改善を求めていく。これに対し、EU側は、(1)従来から関心の高い非関税措置(2)「見直し」にあたって加盟国からさらなる進展を強く求められた鉄道分野を含む調達(3)加工食品等の関税撤廃(4)地理的表示(GI)の保護――などを中心に要求を高めてくることが予想される。
日本政府としては、15年中の大筋合意を目指して交渉を加速化していく。交渉が厳しさを増していくと予想されるなか、望ましい結果を得られるよう、引き続き経済界と一体となって取り組んでいきたい。
■ 今後の交渉の見通しと課題=田中通商機構部長
6月27日付の欧州理事会の結論文書において、「2015年までに、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)を含め、国際貿易協定交渉を終える」とされており、日EU EPA交渉の加速化が必要との認識がEU側にもみてとれる。また、日本産業界からの働きかけが結実し、欧州業界による早期締結の支持も拡大。これらを交渉の推進につなげていきたい。
EUの関税は、完成品のみならず部品についても高く、欧州現地生産に大きな影響があるため、しっかり交渉していく。原産地規則は日EU米で異なるが、使い勝手のよさを追求したい。非関税措置は、EU韓国自由貿易協定(FTA)でも注目されているが、日本からEUに改善を求めている事項についても取り上げ、個別具体の課題への対処のみならず、将来の課題に取り組んでいこうとしている。ほかにも、投資・サービス、知的財産(GI=地理的表示を含む)、セーフガード等の貿易救済で議論を進めている。
TTIPでは将来、規制が原因で生じる問題を防ぐため、「規制協力」について議論されている。企業活動の中心が貿易から投資に移っているなか、今起きている問題だけでなく、これからの課題をどう扱うかを視野に置く必要がある。日EU EPAは先進国同士のFTAであり、伝統的な分野以外の分野も交渉の土俵に上がっている。規制協力に関して、欧州化学品規制(REACH)などを担当する企業総局と日EU産業政策対話の場で議論している。
【国際経済本部】