経団連の産業技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正共同委員長)は3日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、橋本和仁東京大学大学院教授(総合科学技術・イノベーション会議議員、産業競争力会議議員)から、イノベーション・ナショナルシステム改革における研究開発法人の機能強化について説明を受け、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 産業競争力強化に向けたイノベーション・ナショナルシステム改革
現在、政府では産業競争力の強化に向けて、大学改革、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能強化、研究開発法人の機能強化に対する取り組みを行っている。そのなかで、研究開発法人には、効率的な運営のみならず研究成果の最大化が使命として課せられることになる。特に産業技術総合研究所(産総研)や理化学研究所(理研)は「特定国立研究開発法人」に指定され、世界最高水準の研究開発成果 を出すことが求められる。
■ 研究開発法人を中核とした産学官流動策
現在のわが国全体のイノベーション・システムは、資金・人・研究成果が産学官それぞれにとどまっていて交流が少ない。これらを円滑に移動させ、産学官が一体となって連携できるシステムをつくることが必要である。そのためには、(1)基礎研究成果の産業界への「橋渡し」機能の強化に向けた産総研や新エネルギー・産業技術総合開発機構の改革(2)人材の流動化に向けた環境整備(年金や退職金、知的財産の扱い)、特に大学、研究開発法人の間で研究者を兼務できる仕組みであるクロスアポイントメント制度の積極的活用――などの取り組みを着実に進めることが重要である。
■ 研究開発法人を中核とした人材育成策
わが国には、研究マネジメント人材が不足しており、その育成が不可欠である。そのためには、研究開発法人において各研究に密接にかかわることができる主にファンディングを担う研究分野の人材や成果管理の専門家を育成することが必要である。そうしたキャリアを有する人材が産学官それぞれで活躍することが今後求められる。
■ 大学改革
研究開発法人とともに改革が必要になるのは大学である。従来の総合科学技術会議時代には、文部科学省との関係もあり、大学改革に踏み込めなかったが、現在は産業競争力会議でも大学改革が取り上げられていたこともあり、総合科学技術・イノベーション会議では議論の対象に入れられている。今こそイノベーションの観点からの大学改革をしっかりと行わねばならない。
【産業技術本部】