Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月24日 No.3186  「科学技術イノベーション政策の推進に向けた課題」 -東京大学大学院工学系研究科・橋本教授が常任幹事会で講演

講演する橋本教授

経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、東京大学大学院工学系研究科の橋本和仁教授から、「科学技術イノベーション政策の推進に向けた課題」と題する講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能強化

わが国の経済成長を支えたのは主要産業の技術力であったが、近年、わが国の民間研究開発投資は停滞している。わが国の企業は、事業化に時間のかかる研究にほとんど投資しておらず、かつ世界中で取り組みが拡大しているオープンイノベーションへの対応が遅れている。

そこで、安倍政権は、科学技術イノベーション政策を重要課題の一つに位置づけ、昨年6月の「日本再興戦略」と「科学技術イノベーション総合戦略」において、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の抜本的強化や国家として重点的に取り組むべき5分野(エネルギー、健康長寿、次世代インフラ、地域再生、震災復興)が示された。

総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能強化に向けた施策は、次の三つである。一つ目は、総合科学技術・イノベーション会議が、各府省の概算要求の検討段階から、政府全体の科学技術関係予算の重点配分等をリードする新たなメカニズムの導入である。二つ目は、総合科学技術・イノベーション会議が府省の枠を超えて自ら予算配分を行う横断型プログラム「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」である。三つ目は、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を行う「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」である。

■ 産学連携のプラットフォームとしての研究開発法人

その後、先月閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」や「科学技術イノベーション総合戦略2014」では、研究開発法人を産学連携のプラットフォームとなるように位置づけ、(1)革新的技術シーズを事業化に結びつける橋渡し機能強化等の研究開発法人の改革(2)人材の流動性を高め、大学、研究開発法人等の間で研究者を兼務できるようにする「クロスアポイントメント制度」を活用した知の融合――が新たに講じられることとなり、科学技術イノベーションに適した環境の整備が行われることとなった。

■ 今後の課題

今後の課題は、(1)司令塔機能強化(2)大学改革(3)グローバル化――の三つである。一つ目の司令塔機能強化については、総合科学技術・イノベーション会議の機能強化に向けて、各府省や民間からの出向者を機械的に配置する人事を改め、帰属意識が強く専門的知識を持った職員を戦略的に配置すべきである。二つ目の大学改革については、国立大学において、イノベーションの視点から、給与制度改革、国立大学法人運営費交付金の傾斜配分、大学の機能別分類を行うべきである。三つ目のグローバル化については、グローバルな人材と知の循環システムの構築に向けて、新たな競争的資金制度を導入し、国際ネットワークと交渉力を持つ若手研究人材を育成すべきである。

科学技術イノベーション政策の推進に向けて、今後とも産業界の協力をお願いしたい。

【総務本部】