経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)は11日、東京・大手町の経団連会館で2014年度総会を開催した。事業報告・事業計画等の報告に先立ち、外国法共同事業オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所パートナーの前田陽司弁護士から、外国公務員に対する贈賄防止をめぐる動向などについて説明を聞いた。前田氏の説明概要は次のとおり。
■ 外国公務員贈賄防止の背景・経緯
外国公務員贈賄防止への取り組みは、ロッキード事件を契機として1977年に制定された米国FCPA( Foreign Corrupt Practice Act、海外腐敗行為防止法)が端緒である。
冷戦後、グローバル化が進むなか、米国企業が海外市場で不利にならないよう、他国の企業に対しても贈賄防止を求めたことが97年のOECD外国公務員贈賄防止条約(OECD条約)、2003年の国連腐敗防止条約の成立につながった。いまや外国公務員に対する贈賄を犯罪として取り締まる国は、OECD加盟国の100%、国連加盟国の83%に上る。
■ 企業が直面する複数の法務リスク
このようななか、企業は、原籍国の法律、取引先現地の法律、第三国の法律という複数の法務リスクに向き合わねばならない。わが国においては、OECD条約に基づき、98年に不正競争防止法が改正され、外国公務員贈賄罪が規定されたが、適用実績が3件にとどまることから、OECDから執行面の改善要請を受けている現状にある。
また、取引先現地の法律およびその執行はさまざまであり、政治的・恣意的な運用が行われるリスクも高い。さらに、第三国の法律として、米国のFCPA、英国の Bribery Act (贈収賄防止法)への注意が必要である。このうち英国の贈収賄防止法の適用実績はないが、摘発件数が過去100件以上と圧倒的に多く、外国企業・外国人にも積極的に適用されている米国のFCPAに対して特に注意が必要である。同法に違反した場合、起訴猶予合意など司法のチェックを受けない和解による決着がほとんどであることにも留意する必要がある。
なお、外国公務員が法律上履行しなければならない行為に対する少額の支払い( facilitating payment )を認めている国は少数であり、09年にOECDはこれを認めないよう勧告を出している。
■ 企業によるコンプライアンスと収賄側への働きかけの必要性
企業によるコンプライアンスとしては、(1)リスク評価(2)ポリシーの作成(3)内部統制システムの構築と実行(4)研修(5)モニタリング・検証――という流れが一般的な手順であるが、100点満点はなく、求められるコンプライアンスレベルは相当に高いと考えるべきである。
賄賂を要求されて支払った場合に抗弁が認められるのは、例外的な場合に限られているのが現状であるが、現場だけに重い負担を負わせても問題の解決にはつながらない。政府、経済界、国際機関などを通じて取引先現地の政府に対し、賄賂の要求を止めるよう働きかける必要もある。
【国際経済本部】