経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(中谷義昭部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の吉村善範調査国際部長から、欧米の宇宙政策の動向について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 米国の宇宙政策
米国では、大統領が任期中に発表する「国家宇宙政策」に基づいて、「国家安全保障宇宙戦略」と民生部門の各分野・機関における政策・戦略が策定される。オバマ大統領が2010年に発表した現行の国家宇宙政策は、宇宙での米国のリーダーシップ強化を主な目的としており、産業基盤の強化と国際協力の拡大を強調している。
日米欧の宇宙予算を比較すると、米国は1.9兆円、欧州全体では8000億円、日本は1600億円である(1米ドル=97円、1ユーロ=128円で換算)。
米国の主な宇宙開発事業としては、連邦航空宇宙局(NASA)が、国際宇宙ステーション(ISS)について参加国間で20年まで運用を継続させる予定である。国防総省は、軍事衛星やGPSなどの衛星の開発と運用を実施している。
最近、民間の宇宙産業においては、スペースX社が、ISSへの輸送などの官需のみではなく、スカパーJSAT等の民間衛星の打ち上げ契約も獲得した。また、他業種からの参入としては、グーグル社が、180基の衛星によるグローバルインターネット網の整備プランを発表した。
■ 欧州の宇宙政策
欧州の宇宙政策の策定枠組みは、欧州連合(EU)、欧州宇宙機関(ESA)、欧州各国政府の三者が相互に補完しあっている。
07年5月、EUとESAは「欧州宇宙政策」を共同で策定し、承認した。同政策では、産業競争力の高い宇宙産業の創出という観点から、効果的な宇宙分野への公共投資を進めるべきとしている。
EUの主なプログラムとして、欧州独自の航行測位衛星システム(ガリレオ)計画や、地球環境と安全保障問題に関して欧州の自律的な監視システムを構築するコペルニクス計画がある。ESAは、これらの2計画において、衛星開発や打ち上げなどに関する役割を果たしている。
ESAへの出資金が多い上位4カ国は、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスである。ドイツでは、ドイツ航空宇宙センター(DLR)を中心として軍事分野を含む国家宇宙プログラムを計画・実施している。フランスでは、国立宇宙研究センター(CNES)が宇宙政策の立案および実施を担い、アリアンスペース社に出資し、アリアンロケットの開発で中心的役割を果たしている。イタリアでは、イタリア宇宙機関(ASI)が宇宙戦略を策定・実施する。イギリスでは、英国宇宙機関(UKSA)が宇宙活動を推進しており、今年4月には同国初の国家宇宙安全保障政策を発表した。
【産業技術本部】