経団連は12日、東京・大手町の経団連会館で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム・公開フォーラム『女性の力を成長の源泉に』」を開催した。日本国政府、日本経済新聞社、日本国際問題研究所との共催、日本経済研究センターの後援のもと開催され、約1200名が来場した。概要は次のとおり。
■ 安倍首相あいさつ
冒頭あいさつで安倍晋三首相は、女性の活躍推進は最重要課題の一つであると強調。その意義として、多様性を持った組織こそが新たな付加価値を社会に提供できることを挙げたうえで、女性登用に向けた企業の取り組みをさらに加速するべく、(1)有価証券報告書への役員の女性登用状況の記載義務化(2)女性の活躍を推進する企業への政府調達の受注機会の増加(3)新たに女性登用に取り組む企業への助成(4)テレワークの普及による柔軟な働き方の実現――を図っていくと述べた。
また、待機児童の解消に向けた道筋を確実にしていくほか、10月には有村治子女性活躍担当相を中心に「すべての女性が輝く政策パッケージ」を取りまとめていくとした。また最も困難な課題は、無意識に根づく「性別に基づく役割分担」と指摘。首相自身も「女性の輝く社会」づくりに向け先頭に立って行動していくとの決意を述べた。
■ 基調講演「女性のエンパワーメントによる経済効果」
基調講演でクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事は、日本において少子高齢化が急速に進むなか、経済成長力を維持するためには、女性活用が必要と指摘。そのうえで日本経済に必要とされる取り組みとして、課税単位を世帯から個人に変えるなど、経済政策や法制度の改革、企業文化の転換を提案した。
■ 特別対談およびメッセージ
続いて、安倍昭恵首相夫人とシェリー・ブレア「女性のためのシェリー・ブレア基金」創設者(元英首相夫人)による特別対談(モデレーターは山中燁子ケンブリッジ大学客員教授)が行われた。ブレア氏は、女性の活躍に向けて、アファーマティブ・アクション(積極的な差別是正措置)をより推し進めることが必要と述べた。
キャロライン・ケネディ駐日米国大使のあいさつに続き、ヒラリー・クリントン前米国務長官から、女性の潜在能力を解放することが世界経済の成長や安定につながるとのビデオメッセージが寄せられた。
■ パネルディスカッション「女性の活躍が企業競争力を高める」
次に榊原定征経団連会長、アン・スウィーニー・ディズニー・メディア・ネットワークス部門共同会長・ディズニー/ABCテレビ社長、ロハナ・ロズハン・アストロ業務執行取締役兼CEO、ケビン・マカーン・マッコーリーグループ会長、小林いずみANAホールディングス社外取締役をパネリストに、槍田真希子・日本経済新聞記者の進行のもとパネル討議が行われた。
まず企業での女性登用の必要性について、榊原会長は、少子高齢化と人口減少が進むなか、女性の活躍推進は国家レベルでは日本経済が持続的に成長するための成長戦略であり、企業レベルでは急速に変化するグローバル競争を勝ち抜いていくための経営戦略であると強調。そのうえで、女性の活躍推進のカギは企業および社会全体の意識改革にあり、トップによる明確なコミットメントと強力なリーダーシップが不可欠であると指摘した。ロズハン氏は、自らの経験を踏まえ、市場への対応力を向上させるためのカギとして、組織の多様性の重要性を強調した。スウィーニー氏は、自社の事例を引きつつ、女性がリスクのある分野でビジネスを成功に導く原動力となっているとした。
また、役員等に一定割合の女性登用を義務づける「クオータ制」の導入について、小林氏は、元来女性が少ない業界もあるため、一律に数値目標を掲げるのではなく、各社が自主的に目標をつくるべきと指摘した。榊原会長も一律の数値設定は現実的でないとした。
さらに、女性の活躍推進で今後必要な取り組みについて、マカーン氏は、育児休業やフレックスタイムの利用などがキャリア上不利にならないことが重要であり、育休からのスムーズな職場復帰をサポートする仕組みが必要と提案した。さらに、複数のパネリストが、女性が自らの成長に向けチャレンジ精神を持ってほしいと呼びかけた。
その後のレセプションには、シンポジウム参加者に加え、安倍首相夫妻、岸田文雄外相、小渕優子経済産業相、有村治子女性活躍担当相はじめ政府関係者、国会議員、在京大使や榊原会長ら経済界関係者等、300名超が出席した。
【政治社会本部】