経団連は10月16日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会企画部会(中谷義昭部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。和歌山大学の秋山演亮宇宙教育研究所所長・特任教授から、今後の宇宙政策の課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ わが国の宇宙産業と国内政治の動き
日本は独自の技術でロケットを開発した世界で4番目の衛星打ち上げ国であり、「はやぶさ」など先端的な宇宙探査にも成功するなど、世界有数の宇宙技術保有国である。しかし、日本経済の低迷が続くなか、多くの企業が宇宙事業を縮小し、宇宙産業の従事者が減少した。また、世界の商用通信衛星市場などでの日本のシェアはわずかなものにとどまっている。こうしたなか、2008年には宇宙基本法が制定され、09年6月の宇宙基本計画では宇宙関連予算を倍増するとされたが、同年の政権交代により宇宙開発利用のための体制整備などが進まなかった。
そこで私が委員を務めた有識者会議では、10年4月に宇宙政策の立案にかかわる組織改革などを進めるべきとの提言を出した。その後、12年6月の内閣府設置法の改正を受け、7月に内閣府宇宙戦略室や宇宙政策委員会が新設された。
わが国の宇宙関連産業の人員やラインを維持する方法は国家主導型であり、官需に依存しているが、今後は官民共同型や民間主導型を組み合わせる必要がある。また、世界の宇宙利用産業が伸びるなか、わが国がシェアを拡大する戦略が必要である。
今年中に新たな宇宙基本計画が策定されることになり、11月中のパブリックコメントに向けて近く原案が公表される予定である。日本の宇宙産業を支えるためには官民合計で5000億円が必要といわれているが、民需を増やし、新たな宇宙基本計画をどう実行するかが大事である。
■ 宇宙教育
次世代の研究者・技術者育成に向け、現在、北海道・秋田・和歌山・九州に宇宙教育拠点がある。毎年夏に秋田県の能代でロケットの打ち上げ実験を行っており、全国の大学から約400名が参加している。
また、UNIFORMという超小型衛星の打ち上げ計画では、(1)政策を立案するマネージャー(2)設計するエンジニア(3)現場監督の技術者(4)実際に作業するレイバー――の四つに分類し、衛星製作・運用の現場において特に(3)の世界的な技術者の育成を目指している。なお同計画の超小型衛星UNIFORM-1は、9月の御嶽山の噴火の撮影に成功した。
<意見交換>
「限られた予算のなかで国に残すべき技術は何か」との質問に、秋山氏は「宇宙基本法制定以降の成果として準天頂衛星の開発があり、その利用のフォローアップが必要である」と答えた。
【産業技術本部】