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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年4月16日 No.3220 成長と改革志向の財政健全化戦略 -早稲田大学の若田部教授から聞く/財政制度委員会・社会保障委員会合同企画部会

経団連の財政制度委員会・社会保障委員会合同企画部会(太田克彦財政制度委員会企画部会長、浅野友靖社会保障委員会企画部会長)は3月31日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授から、「成長と改革志向の財政健全化戦略を」をテーマに説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.財政健全化の事実

財政再建のためには増収が必要である。ただし、その手段は増税とは限らない。歴史を振り返ってみても、財政危機に陥った国が緊縮財政を採用すると、経済が収縮し、さらなる財政危機を招いている。特にデフレ懸念があるときには、増税による財政再建は不可能である。

経済成長なしに財政再建はありえない。成長に頼るのは不確実との声もあるが、成長を前提にしないと確実に日本の財政は破綻する。政府は、名目3%、実質2%成長を掲げているが、私は名目4%成長も可能だと考えている。インフレ下では消費者物価指数(CPI)とGDPデフレーターはほぼ同じになるので、日銀のインフレ2%目標が達成される場合には、実質2%成長でも名目4%成長となるためである。

日本はこれまで、1980年代と2000年代の小泉・第1次安倍政権の2度「増税なき財政再建」に成功している。この2回の共通点は、名目成長率が上昇し、歳出削減を進めたことである。

デフレから完全脱却し一定の名目成長率を安定的に達成するまで、消費税は引き上げるべきでない。実質所得を引き下げることで、デフレ圧力を強めてしまい、デフレ脱却を遠ざけてしまう。

2.望ましい政策手順

以下の6つの順序で財政健全化を進めるべきである。

まずは、(1)デフレから脱却して名目成長率を引き上げることが必要である。そして、(2)経済成長を促進し、実質成長率を高めていく。

次に、(3)政府資産の圧縮。財務省は、保有資産のうち現金化が想定できないものが相当程度含まれているとしているが、保有資産には大都市圏の優良な不動産も含まれる。高度利用を図り、リース方式を導入するなど、活用方法はいくらでもある。民間側から政府資産のオペレーションをしっかりチェックしなければならない。

そして、(4)歳出削減。特に社会保障改革は重要であり、年金・医療・介護は歳出削減の余地が大きい。

続いて、(5)制度改革。例えば、他国には例のない国債の60年償還ルールと減債基金を廃止し、不合理な支出を削るべきである。加えて、欧米とも遜色ない徴税システムを整える観点から、マイナンバー制の機能強化とともに、国税庁と日本年金機構を統合し、歳入庁を創設すべきである。社会保険料と税金を一体徴収し、より確実な個人所得・資産捕捉を可能とすることで増収を図ってはどうか。

(6)増税は、名目4%成長を達成してもなお、財政再建が難しい場合に限ることで、最後の手段とすべきであろう。

【経済政策本部】

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