8月28日、政府主催の「WAW! 2015」(女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム)に、安倍晋三総理大臣、マリリン・ヒューソン ロッキード・マーティンCEOをはじめ、国内外のトップ・リーダーが出席し、女性の活躍推進のための取り組みについて議論が行われた。経団連は、同シンポジウムに特別協力するとともに、榊原定征会長がスピーチを行った。榊原会長のスピーチは次のとおり。
男女雇用機会均等法の制定から30年、日本で女性の活躍推進がいわれて久しいが、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、わが国は142カ国中第104位と、諸外国に大きく後れを取っている。
しかし、この2年で、日本の社会と国民の意識は確実に、また大きく変わりつつある。これは安倍総理が、女性の活躍を単に「女性のため」の施策ではなく、日本の経済・社会全体のための「成長戦略」と位置づけて、強力なリーダーシップをもって推進してこられた賜物であり、深く敬意を表する次第である。
昨年9月のWAWの第1回シンポジウムで私は、女性の活躍は、企業が厳しさを増すグローバル競争を勝ち抜くための経営戦略であると申し上げ、経済界を挙げて、政府と一体となって推進することを約束した。それから1年、経団連は、昨年4月に策定した「女性活躍アクション・プラン」を着実に実行に移してきた。
このアクション・プランでは、各企業のトップ自身が経営の意思として女性活躍推進に率先して取り組むことを求めるとともに、女性の管理職登用に関する自主行動計画の策定を求めた。これまでに450社が野心的な計画を策定し、公表しており、その数は日々増えている。この自主行動計画を契機として、新たに計画を立てる企業、よりレベルの高い目標を作り直す企業もあり、企業が着実に前進していることを実感している。
経団連としても、女性管理職養成講座やダイバーシティ・マネジメントセミナーの開催、官民連携による理工系女性人材(いわゆるリケジョ)の育成などにより、こうした企業の取り組みを支援している。
また経団連自身も、70年の歴史上初めて女性の役員を誕生させた。本日、このあとのパネル・ディスカッションに登壇されるBTジャパンの吉田晴乃社長である。まだ、わずか1人だが、日本の経済界が変わるという大きな第一歩と受け止めていただければ幸いである。
今日、「企業の存続に女性の活躍が欠かせない」ことは、経営者のコンセンサスといえる。しかし、専業主婦が家庭を守ることを前提に、長時間働くことを是としてきた旧来の男性中心の働き方をそのままにして、女性にさらなる活躍を促しても、女性は仕事に加え、家事・育児のほぼすべてを背負わされるのでは、とても無理だと思われる。
大事なことは、「女性が活躍するには、男性も含めた企業、そして社会全体が、働き方や生活のスタイルを変えなくてはならない」ということ。このことに、経営者、そして社会全体が気づき、実行に移すことだ。私自身、共働きの妻と共に3人の娘を育てたが、妻はワーキング・マザーとして、そして私はワーキング・ファーザーとして、仕事と家庭を両立させてきた。これからは男性も、育児や介護など、仕事以外に家庭内のさまざまな役割を担っていかなければならない。さらに、地域活動や社会貢献活動に携わったり、社会人大学院で勉強したりする人も増えてくるだろう。
仕事一辺倒ではない、多様な働き方や生活のスタイルが認められる、文字どおりのダイバーシティ社会に変えていかなければならない。そして企業には、働いた時間の長さではなく成果で評価し、多様な人々の能力を上手に活かして、チーム全体として生産性を向上させるようなマネジメント、つまりダイバーシティ・マネジメントが求められるようになる。
このシンポジウムを通じて、本当の意味でのダイバーシティの実現に向けた知恵や経験が共有され、社会の変化が加速されることを祈念する。
【政治・社会本部】