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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月5日 No.3245 金融庁からインサイダー取引規制の見直しについて聞く -金融・資本市場委員会資本市場部会

経団連は10月20日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会資本市場部会(岡田譲治部会長)を開催した。金融庁総務企画局市場課の多田治樹市場機能強化室長、船越涼介専門官から、今年9月に公布・施行された、いわゆる「知る前契約・計画」にかかるインサイダー取引規制の適用除外規定の見直しの概要について説明を聞き、質疑を行った。説明の概要は次のとおり。

1.改正の背景

金融商品取引法は、証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を確保する観点からインサイダー取引を規制している。

しかし、重要事実(株式の募集の決定や業務提携の決定等)を知った者が、重要事実を知ったことと無関係に取引を行ったことが明らかな場合には、証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を損なうことはないと考えられることから、いわゆる「知る前契約・計画」に基づき行われた取引についてはインサイダー取引規制の適用が除外される。

一方これまでは、「知る前契約・計画」について「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」(以下、府令)に限定列挙された類型のみが適用除外の対象とされていたため、規制範囲が過大となっているおそれがあった。

そこで金融庁では、2012年に金融審議会のもとに設置した「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」で規制の見直しを検討、同年12月に公表された報告書では、より包括的な適用除外規定を設けることとされた。

これを受けて金融庁では今年6月に府令の改正案をパブリックコメントに付した。改正府令は9月2日に公布され、同月16日に施行されている。

2.改正の概要

新たな規定によりインサイダー取引規制の適用が除外されるためには、次の3つの要件を満たす必要がある。

  1. (1)インサイダー情報を知る前に書面による契約・計画の締結・決定を行い、当該契約・計画の履行・実行として売買等を行うこと。

  2. (2)契約・計画の事後的な捏造を防止する観点から、インサイダー情報を知る前に次の3つのいずれかの措置が講じられること。

    1. (1) 「知る前契約・計画」の写しを証券会社に提出し、提出日付について確認を受ける。ただし、証券会社が契約や計画の当事者となる場合は、証券会社自身が自己の契約・計画を確認することとなり、事後的な捏造を防止する措置として適切ではないことから除外される。
    2. (2) 「知る前契約・計画」に確定日付を付与する。ただし、この方法は、(1)の方法を使うことができない場合、すなわち証券会社が契約・計画の当事者である場合に限られる。確定日付については、一般的には公証人役場において、公証人が契約書面・計画書面に日付のある印章を押捺する方法が想定される。
    3. (3) 「知る前契約・計画」を金商法第166条(公開買付等に関しては同167条)4項に定める公表の措置に準じ公衆の縦覧に供する。その方法としては、一般的にはTDnet(東京証券取引所の適時開示情報システム)を利用した開示が想定される。なお、自社のウェブサイトでの公表は認められない。
  3. (3)売買等の別、銘柄、および期日ならびに当該期日における売買等の総額または数が、「知る前契約・計画」において特定されまたは裁量の余地がない方法により決定されること。

3.「知る前契約・計画」の活用イメージ

金融庁としては、今回の改正により、「知る前契約・計画」が、役員・従業員持株会の新規加入や拠出額の増額、持株会退会時の単元未満株の売却、役員就任時の自社株の買い増し、上場会社等による資本・業務提携に伴う相手方の株式の取得、担保株式の売却等の場合に活用され、株取引が活発化することを期待している。

【経済基盤本部】

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