Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月31日 No.3264  オリンピック・パラリンピックのメダリストが講演 -オリンピック・パラリンピック等推進委員会

あいさつする豊田委員長(左)と長榮委員長

右から河合氏、寺川氏

経団連は10日、都内でオリンピック・パラリンピック等推進委員会(豊田章男委員長、長榮周作委員長)を開催し、パラリンピック5大会(水泳)でメダルを獲得した河合純一氏と、2012年ロンドンオリンピック100メートル背泳ぎ銅メダリストの寺川綾氏から、競技生活から得た経験や、経済界によるスポーツ支援への期待などを聞いた。

■ 障がい者スポーツを観戦しファンになることが大切な支援

河合氏は生まれつき弱視で15歳の時に失明したが、幼少期から続けていた水泳で1992年のバルセロナ・パラリンピックに初出場した。河合氏は「日本ではパラリンピックが報道される機会は少なく、観客席の声援もまばらな時代だった」と当時を振り返った。大学の水泳部では、練習をともにするオリンピック選手らが河合氏を積極的にサポートし、「一流の選手は心も一流だ」と感じたという。その後、96年アトランタ大会の金メダルをはじめ、通算21個のメダルを獲得、12年ロンドン大会まで出場を続けた理由について「なかなか世間は変わらず、元パラリンピアンでは関心を持ってくれない。注目されるためには選手を続けるしかなかった」と語った。

2020年東京大会については、「もともとパラリンピックという言葉は、パラプレジア(脊椎損傷による下半身麻痺)を語源に日本人がつくったもの。64年に続き、世界初の夏季パラリンピック2回目が開催される意義は大きい」と述べた。

経済界への期待としては、各企業の出前授業と組み合わせるかたちでの「障がい者スポーツ教育プログラム」の開発や、アスリートの雇用などを挙げたが、最も大切な支援は「障がい者スポーツを観戦し、ファンになってくれること」だと強調。「2020年大会だけでなく、今から観戦に行き、障がい者スポーツを知ってほしい。そして、周りの人も観戦に誘ってほしい。社会全体を変える前に『目の前の1人を変えること』の連続が大切である」と呼びかけた。最後に「これからも『失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ』というパラリンピックの精神で頑張っていく」と抱負を語った。

■ 夢を叶える力=意欲と精神力、支えあう仲間と周囲への感謝が大事

寺川氏は、喘息を克服するために幼少時から水泳を始め、92年バルセロナ大会での日本人選手の活躍をみて「自分もオリンピックに行きたい」と思うようになった。その夢は、いつしか具体的な目標に変わったという。こうした夢、目標を叶えるためには、「内容を紙に手書きして、常に確認することが大事である」とし、水泳教室の子供たちにもそのように指導していることを紹介した。また、「スポーツに限らず、日常生活でも『自分がどうしたいのか』という意欲を持つこと大切だ」と述べた。さらに、「練習すれば誰でも速く泳げるようになるが、速さだけではない『強さ』を身につけるには、精神力や自分をコントロールする力が必要だ。辛くなってから頑張ることが、結果につながる」と強調した。

スポーツに取り組むうえで必要なものとしては、苦しい時に支え合い刺激し合う仲間、そして周囲への感謝を挙げた。寺川氏自身も、所属する会社のサポートや励ましに支えられ、「ロンドン大会では、自分ではなく、周囲への恩返しのために努力し、メダルを獲得できた」と振り返った。

また、オリンピックなどの国際大会では不慣れな環境に置かれるが、「現地での日本食の調達や畳の用意など、一つ一つの気配りによってアスリートファーストが実現され、選手にとって大きな力になっている」と説明した。そして、「夢を叶えるには、たくさんのパワーと積み重ねが必要だが、応援・声援がパワーになる。引き続き、選手たちの応援をお願いしたい」と締めくくった。

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両氏の講演終了後、委員会は今後の活動案を審議した。具体的には、普段注目されることの少ないスポーツのアスリート、若手アスリート、選手をサポートするスタッフなどに光を当てるため、経営トップと著名アスリートが全国各地の現場に足を運び、その情報を発信することによって、スポーツを応援する人を増やしていく企画を了承した。今後数カ月の試行期間を経て、企画の詳細を固めていく。

【教育・スポーツ推進本部】