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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年10月13日 No.3288 1%クラブがシンポジウムを開催 -共通価値の創造に向けて議論

あいさつする二宮1%クラブ会長

1%(ワンパーセント)クラブ(二宮雅也会長)は9月26日、東京・大手町の経団連会館で約200名の参加者を得て、「共通価値の創造に向けて」と題するシンポジウムを開催した。開会あいさつで二宮会長は、グローバルな課題が深刻化するなか、社会的課題の解決における日本企業の「イノベーションの力」に期待を示した。続いて、コモンズ投信の渋澤健会長が基調講演を行った後、パネルディスカッションでは、損害保険ジャパン日本興亜CSR室シニアアドバイザーの関正雄氏のコーディネートのもと、クレアン代表取締役の薗田綾子氏、キリンホールディングスグループ経営戦略担当主幹CSV推進室長の森田裕之氏、電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表の並河進氏が議論を行った。
基調講演およびパネルディスカッションの概要は次のとおり。

■ 基調講演「社会課題解決に向けた企業の役割」

私の高祖父にあたる渋沢栄一は、日本の未来のために民間力を結集して国力を高めていく必要性を感じ、日本初の国立第一銀行をはじめ約1100の企業、社会的事業等を立ち上げた。これらの活動から現代にも通じるメッセージは「共感」と「サステナビリティ」の必要性だ。その著書「論語と算盤」で「正しい道理の富でなければその富は完全に永続することができない」とあるように、道徳と経済という異なる2つの概念を両立させるために知恵を絞り、新しいものを生み出すことが求められる。今の言葉でいえば、「CSRか利益」ではなく、「CSRと利益」の両立であり、企業においてこの役割を担うのが、経営者である。

また、新しい価値の創造には、既存の枠の外に出て考える必要がある。CSR部門は多様なステークホルダーとの接点を有するので、社内外の視点から会社をみつめ、経営にインプットする役割が求められる。

近年、国連のSDGs(持続可能な開発目標)のように、地球的課題の解決を目指す動きがある。企業には、持続的成長を果たすために、地球的課題についてさまざまなステークホルダーと対話・協働して共創する「グローバル・エンゲージメント」の発想も求められる。

■ パネルディスカッション「事業活動と社会課題の解決を結びつけた企業等の取り組み」

◇ 薗田氏

共通価値の創造(Creating Shared Value=CSV)には、具体的な事業開発等を考えるビジネス戦略と、経営ビジョンを考えるコーポレート戦略の要素がある。日本でもビジネス戦略としてのCSVの事例がみられるようになったが、欧米の先進企業ではコーポレート戦略として自社が社会に存在する意味を再定義し、長期的な事業方針策定に反映させている。

◇ 森田氏

キリングループでは、これまで個社レベルでCSVを推進してきたが、2014年にキリンホールディングスにCSV推進室を設置し、グループ全体として戦略的な推進を進めるなかで、16年には事業会社のトップが集まるCSV委員会においてグループ全体の重点課題「健康」「地域社会への貢献」「環境」を選定した。今後はコミットメントも提示したい。

社会価値と経済価値を「同時に」達成するのは難しい。CSVのバリューが返ってくるまでには時間がかかるが、ブランド価値や企業のファンといった不可視的な価値向上も含めて、CSVの推進を今後も継続したい。

◇ 並河氏

「社会のためにデザインする」ソーシャルデザインには、そのほかにも2つの意味が含まれている。障害者とともにデザインするインクルーシブデザインなど「社会とともにデザインすること」、リユース促進のシステムをつくるといった「社会の仕組み自体をデザインすること」もソーシャルデザインだ。今後、社会とともに社会の仕組みをつくるデザインづくりに貢献したい。

社会課題の解決は「気づき」「商品やサービス等の具体的な活動」「新しいルールや評価の指標等の仕組みづくり」の3段階に分けられる。このうち、気づきや仕組みづくりの段階ではCSR部門が強みを発揮できる。

【政治・社会本部】

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