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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年11月3日 No.3291 ストレスチェックを振り返る~今すべきことと今後に向けて<第2回> -ストレスチェック実施上の留意事項/イオングループ総括産業医 増田将史

2015年12月開始のストレスチェック制度においては、メンタルヘルス不調と密接に関連のあるストレス状態に関する検査を実施することになっている。そこで、プライバシー保護の観点から、ストレスチェック結果の労働者への直接通知(事業者には本人の同意なく通知しない)が規定されたほか、労働者に対する不利益な取り扱いの禁止が法令の条文に明示されている。本稿では、職場でストレスチェックを実施するに際して留意すべき点について概説する。

■ 「実施者」によるストレスチェックの実施の意味

ストレスチェックには、高ストレスか否かの判定と、医師による面接指導が必要か否かの判定の2種類がある。前者は回答の点数化による自動判定で構わないが、その判定基準について実施者が専門的な見地から事業者に意見を述べることが求められている。後者は、高ストレスであった受検者一人ひとりについて、面接指導が必要かどうか、実施者が判定する必要がある。前者の判定機能のみ実装するICTプログラム等もあり、その場合実施者を別途確保する必要があることから、外部業者の選定等に際し、注意が必要である。

■ 産業医による個人結果の把握の可否

当該事業場の産業医であるからといって、ストレスチェックの個人結果を把握することはできない。個人結果を把握してよいのは当該事業場のストレスチェックの実施者・共同実施者・実施事務従事者に限定されており、産業医であるかどうかは要件とされていない。産業医への結果提供に際しては、当該事業場の実施者・共同実施者を兼務しているかどうか確認する必要がある。

■ 健康診断との関連

ストレスチェックはいわば「ストレスに特化した健康診断」と例えることができる。厳格で特殊な情報管理が求められている点は異なるものの、健康診断の問診票とあわせてストレスチェックの質問紙を配布・回収できる等の利便性を鑑み、両者を同時に実施する企業もある。その場合、それぞれの情報の取り扱いが大きく異なることから、健康診断の問診票とストレスチェックの質問紙を別葉にする等、両者の区別の明確化が求められている。

■ 受検勧奨

ストレスチェックは健康診断と違って労働者側に受検義務は課せられておらず、労働者への受検勧奨による受検率向上の取り組みが期待されている。事業者からも、受検しない労働者に対する不利益取り扱いが行われないことを確保したうえで実施することが可能とされており、個々の労働者の受検有無については事業者が把握可能とされているが、不利益取り扱いかどうかは受検勧奨される労働者側の主観に左右されることから、実施に際しては慎重な運用が求められる。

例えば、未受検者の一覧表を事業場に掲示して受検を促す、朝礼等ほかの労働者のいる場で未受検者の個人名を読み上げる等の行為は、未受検者に対する精神的負担や不利益取り扱いにつながりかねないことから、避けるべきである。特に、健康診断とストレスチェックを同時に実施していて、健康診断と同様の要領で受検勧奨すると受検強要ととられかねないため、注意すべきである。

■ 実施時期

集団分析の実施の便宜上、集計・分析単位の集団については一斉実施が望ましいとされている。実務運用上は、ストレスチェック結果等に基づいて人事異動がなされた等、不利益取り扱いに関する誤解やトラブルを回避するため、人事異動の前の時期には実施しないことが無難と思われる。

■ 結果通知

ストレスチェックを受検した労働者に対し、前述のとおり、高ストレスか否かの判定と、医師による面接指導が必要か否かの2種類の判定を通知する。ICTプログラムを使用する場合、前者は回答した直後に表示させることができ、後者については実施者が確認する関係上、タイムラグが生じることが多い。よって、後者の判定を別途通知する場面が生じるが、その際、封書等で後者の判定を通知することによって、「2つ目の封書が届く」=「面接指導の対象」=「高ストレス判定」であることから、個人の結果が職場の同僚等に部分的に漏洩してしまうこととなる。極力、電子メールでの通知機能を備えたICTプログラムを利用するか、前者・後者を1回で通知する等、プライバシー保護に配慮した運用方法を検討しなければならない。

ストレスチェック実施上の留意事項

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