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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月1日 No.3298 2017年米国政治の展望を聞く -米国大統領・連邦議会選挙の分析と影響/アメリカ委員会

マクヒュー氏(左)、ゴードン氏

経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長、村瀬治男委員長)は12月8日、東京・大手町の経団連会館で、K&L Gates法律事務所のジョン・マクヒュー前米国陸軍長官、元ニューヨーク州選出連邦下院議員(共和党)とバート・ゴードン元テネシー州選出連邦下院議員、下院科学技術委員会委員長(民主党)との懇談会を開催した。石原委員長の司会のもと、村瀬委員長、守村卓アメリカ委員会企画部会長をはじめ約90名が参加した。

会合では、マクヒュー氏とゴードン氏による、共和党・民主党からみた米国大統領・連邦議会選挙の分析およびトランプ次期政権下における重要政策、2017年の米国政治の展望についての対談の後、参加者との間で活発な意見交換が行われた。対談の概要は次のとおり。

■ 次期政権の動向はしばらく予測困難

トランプ氏の当選は、米国政治史のなかでも突出した混乱を意味している。政治都市としてのワシントンDCは狭く、通常はお互いの主張・立場がわかるが、公職の経験がない同氏の立場は明らかでない。閣僚を含めた政府高官の人事や予算要求は、同氏の政策方針を理解するうえで重要であり、大統領就任後最初の100日間そして就任初日の大統領令や規則の撤廃や見直しが注目される。しばらくは企業にとって、予測困難な状況が続くであろう。

政策が具体化されるなかで、トランプ氏が立場を改める可能性もある。例えば、NAFTA(北米自由貿易協定)について再交渉または脱退する旨を述べているが、完全脱退はNAFTAの枠組みを前提とする企業活動に重大な混乱をもたらす。日本企業のみならず多数の米国企業も同じ状況にあり、影響の重大さが次期政権に正確に伝えられる必要がある。

■ トランプ氏と連邦議会との関係

トランプ氏が政策を実現するためには、議会との協力が欠かせない。共和党は上下両院の多数議席を維持したが、上院は通常の法案可決に必要な60議席は掌握しておらず、また、各議員が党執行部の方針に必ず従うわけではなく、地元選挙区の利益を重視することもあり、共和党の政策がすべて実現することはない。むしろ、トランプ氏が民主党議員との連携を模索する場面もみられるであろう。

■ 今後の日米関係と日本企業としての働きかけ

日米関係は、TPP(環太平洋パートナーシップ)を除けば良好なスタートを切ったといえる。安倍首相とトランプ氏の会談が当選直後に実現し、また安倍首相が真珠湾を12月下旬に訪問予定であることの意義は大きい。TPPは安全保障の観点からも重要であり、次期政権の判断は残念である。日米二国間貿易協定の可能性もあるが、いずれにせよ、まずは選挙中植えつけられた貿易に対する否定的な印象を払拭する必要がある。

次期政権の掲げる政策は、内容によって勝者と敗者を生み出すもので、企業にとってリスクもチャンスも大きく、これらを見極める必要がある。日本企業は他国の企業に比べれば、米国連邦政府や議会に対する働きかけが遅れている印象がある。日本企業は米国経済への貢献という事実を積極的に利用し、早めに行動して働きかけていくべきだ。

【国際経済本部】

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