Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月19日 No.3300  2017年版経労委報告を公表 -人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上

記者会見する工藤副会長・経営労働政策特別委員長

経団連(榊原定征会長)は17日、春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスを示す「2017年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を公表、記者会見を行った。同委員会の委員長を務める工藤泰三副会長は、記者会見の冒頭、今年の副題を「人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上」とした理由について、人口減少のマイナス面ばかりに着目するのではなく、働き方・休み方改革の推進による生産性向上や、多様な人材の活躍促進などに取り組む絶好のチャンスと前向きにとらえるべきと語った。
報告書の主なポイントは次のとおり。

■ 第1章「企業の成長につながる働き方・休み方改革」

経団連が今年度、集中的に活動を展開している働き方・休み方改革に向けた取り組みのほか、労働生産性の向上、健康経営のさらなる展開、介護離職予防に向けた支援、多様な人材の活躍促進、非正規労働者の現状と課題について記述したうえで、これらに取り組むことが企業の成長や収益の拡大につながるとの考え方を示している。

■ 第2章「雇用・労働における政策的な課題」

労働時間制度改革の推進や、同一労働同一賃金をめぐる動向などといった雇用・労働における政策的な課題を取り上げ、経団連の考え方や人事・労務管理上の留意点などを整理した。

■ 第3章「2017年春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢」

「賃金決定にあたっての基本的な考え方」のなかで、ベースアップの累積効果や、適正な総額人件費管理と法定福利費増大の影響など、重要な考え方を解説している。

連合「2017春季生活闘争方針」への見解

月例賃金の要求で「2%程度を基準」という幅のある表現をしていることに一定の評価をしつつ、月例賃金の引き上げに強いこだわりを示していることに対して、各企業での賃金引き上げの選択肢が狭まるとの懸念を表明。また、中小組合において、「大企業との格差是正」を理由に、月例賃金で1万500円以上という極めて高い要求水準を掲げる一方で、「大手追従・大手準拠からの転換」を打ち出していることの矛盾を指摘している。

経営側の基本スタンス

経済の好循環を力強く回していくために3年間続けてきた賃金引き上げのモメンタムを今年も継続していく必要があることを強調している。一方、大幅な賃金引き上げにもかかわらず、個人消費が上向いていない要因として、将来不安と消費者マインドの変化を指摘。それらへの対応がないまま賃金を引き上げても、その効果は限定的となる懸念があることから、将来不安の払拭に向けて官民挙げて取り組むことの必要性を述べている。

各企業の賃金については、さまざまな考慮要素を勘案しながら適切な総額人件費管理のもと、自社の支払能力を踏まえて企業が決定するとの大原則を踏まえたうえで、経済の好循環を力強く回すという「社会的要請」も重視しながら、自社の収益に見合った積極的な対応を呼びかけている。具体的には、収益が拡大した企業や、中期的なトレンドとして収益体質が改善している企業について、16年に引き続き「年収ベースの賃金引き上げ」の前向きな検討を求めている。

検討にあたっては、定期昇給やベースアップ、賞与・一時金の増額、諸手当の見直しを柱に、自社の実情に適した方法を多様な選択肢から見いだしていく必要があるとしている。

このほか、配偶者控除等の変更を契機とした配偶者手当の再点検・見直しや、働き方・休み方改革への対応として、基本給の変更を伴わない所定労働時間の短縮なども挙げている。加えて、将来不安の払拭と消費喚起に向けた対応として、非正規社員の正社員化推進、定年後の継続雇用社員の処遇改善のほか、介護手当やプレミアムフライデー手当の創設を例示し、企業労使の議論のきっかけを提供している。

さらに、「賃金制度のあり方・見直し」など、複数年度にわたる課題にも労使で積極的に取り組む姿勢を強調した。

最後に、将来不安の払拭に向けて、社会保障制度改革の推進など政府に求めるべき対応・政策をまとめている。

2017年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

【労働政策本部】