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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月23日 No.3305 人工知能研究の動向などを聞く -未来産業・技術委員会

説明する杉山氏(左)と榎本氏

経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正委員長)を開催し、理化学研究所革新知能統合研究センター(AIPセンター)の杉山将センター長から同センターの取り組み、文部科学省研究振興局の榎本剛参事官から人工知能分野の人材育成について説明を聞き意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 人工知能研究の動向

最近、コンピューター囲碁や自動運転車など、身の回りのさまざまな場面で人工知能(AI)の活用が注目されている。その背後には機械学習(注)のブレークスルーがあり、米国の人工知能学会で取り上げられるトピックについても、機械学習の研究開発のトレンドが顕著になっている。

関連する国際会議への参加者数も毎年倍々で増えており、近年はIT系企業だけでなく金融などの企業からの参加も増えている。特に、機械学習分野のトップカンファレンスであるNIPS(Neural Information Processing Systems)は、AI研究者の主戦場であるが、米国のIT企業からは数百名規模で参加している一方、日本企業からは数十名程度にとどまっている。私自身も、昨年の「NIPS2016」においてアジア人初のジェネラルチェアを務めたが、日本人の論文シェアは2%程度であり存在感は薄い。

最新の研究動向としては、さまざまなアプローチで切磋琢磨しているが、モデルとデータをどう活かすかという学習法に関する研究が大きなテーマとなっている。

■ AIPセンターの取り組み

人工知能研究開発の司令塔として、総務省、文部科学省、経済産業省の3省連携のもと「人工知能技術戦略会議」が設置され、理化学研究所でも日本橋に新たにAIPセンターを設置し、(1)目的指向基盤技術研究(2)汎用基盤技術研究(3)社会における人工知能研究――の3つの研究グループで活動を進めている。

基礎研究はいまだ個人勝負であり、10年後に注目される革新的な基盤技術の研究開発を行うため、国内外の優秀な研究者を集めている。応用研究は予算規模の勝負ではあるが、日本が強みを有するiPS細胞やものづくりの強化と社会的課題(高齢者のヘルスケア、自然災害への対応、橋梁やトンネル等の検査、観光・地方再生等)の解決に向け、テーマを厳選している。今後もさまざまな企業や大学等との連携を進めていきたい。

■ 人材育成について

AI人材の不足が各所で指摘されるなか、特に短期的観点で、AIのトップレベル人材を即戦力として育成していくことが急務である。このため、AIの社会人向け教育プログラムの設置を検討し、産業界の求める人材を育成するとともに、企業と大学の共同研究等の取り組みを広げていくなど、産学官の連携による人材育成を進めていきたい。

<意見交換>

意見交換では、内山田委員長から「AIそのものは出口ではなく、いかに産業や応用分野と結びつけるかが重要。あらゆる省庁や研究機関との連携を期待したい」との意見があり、杉山センター長から「AIPセンターとしてもさまざまな主体間の橋渡しを進める」との回答があるなど、日本の現状を踏まえた産学官連携や人材の重要性等について議論が行われた。

(注)機械学習=機械が、データの解析によって、規則性や論理パターンなどを自ら見つけ出す「学習」を行うこと

【産業技術本部】

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