経団連は2月3日、大阪市内で内閣府との共催により「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。同セミナーは、経営戦略としてのダイバーシティ時代の働き方やマネジメントについて考えることを目的に2013年度から開始された。今回のセミナーには、企業の管理職やダイバーシティ推進の担当者など約220名が参加した。
■ 基調講演「The Digital Possible」
第一部では、経団連審議員会副議長・女性の活躍推進委員長の吉田晴乃氏が基調講演を行った。概要は次のとおり。
私は現在、4つのわらじ―母親・BTジャパン社長・経団連審議員会副議長・規制改革推進会議委員を履いている。このような重責を抱えながら働き続けてこられたのは、ICTの進展により生産性革命が起こり、いつでもどこでも仕事ができる環境が整ってきたことが背景にある。また、これまでのビジネスキャリアにおいて、女性エグゼクティブとの出会いや成功体験も自分を支えてくれた。一方で、アメリカやカナダでキャリアを積んできた私でさえ、BTジャパン社長への任用面接では、自分が女性であることに少なからずハンデを感じた。しかし、幹部から、「われわれが求める社長のKPIに性別の項目は含まれていない。何か問題はあるか」といわれ、今でも、その時の感動は忘れられない。
技術革新がいくら発展しても、「子育て」というデジタルで代替できないアナログな、人間の大切な役目がある。ただし子どもはいつまでも子どもではなく、成長していくものである。私がビジネス社会で積み上げた経験は、これから社会に出る最愛の娘に対して最高の贈り物になると確信している。
テクノロジーを駆使することで、われわれは、いくつもの人生をパラレルに過ごせるようになる。女性も男性ももっと人生に対して貪欲になり、新しい人間の生を追求できる社会―それがSociety 5.0の神髄だろう。
■ パネルディスカッション「リーダーが語る我が社のダイバーシティ戦略」
第二部では、ストライプインターナショナル社長の石川康晴氏、大成建設人事部部長の塩入徹弥氏、経団連女性の活躍推進委員会企画部会長・野村ホールディングス/野村證券執行役員の中川順子氏をパネリストに迎え、先進各社の特徴的な事例紹介や取り組みを浸透させるための意識改革の手法を聞いた。
石川氏は、ダイバーシティ推進のカギは、「トップのコミットメント」であることを強く訴えるとともに、短時間勤務の社員の方がフルタイム勤務の社員より高い生産性を上げているケースが多々あることや、同社では残業時間が短いほど離職率が下がるという相関関係にも着目し、1カ月の平均残業時間を5時間(現在約9時間)にしたいと語った。
塩入氏は、当人だけでなく、家族や上司の理解促進や会社の風土の改善などの取り組みを紹介し、「ダイバーシティは総論では理解していても各論では理解が難しいため、研修や啓発活動が重要である」と説明。取り組みが直接業績に結びつかなくても、退職者の減少や社員職場満足度が上昇する点にも着目し、定点観測が必要であると話した。
ファシリテーターを務めた中川氏は、「ダイバーシティ推進にはさまざまな取り組みがあるが、この2社のように企業にとってのメリットを数値化・見える化することが、周りを巻き込む1つのポイントになる」と締めくくった。
【政治・社会本部】