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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年3月30日 No.3310 佐渡島駐タイ大使からタイの政治・経済情勢の現状と展望を聞く -日タイ貿易経済委員会

経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で日タイ貿易経済委員会(岡藤正広委員長、志賀俊之委員長)を開催し、佐渡島志郎駐タイ大使から、最新のタイの政治・経済情勢と展望等を聞き、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

■ タイ経済の現状と展望

プミポン・アドゥンヤデート前国王の崩御後、株式・為替市場に変動がみられたものの、現在は安定的に推移しており、企業の事業活動に影響はない。また崩御後は、消費を自粛するムードから、企業・国民ともに不要不急の消費を控える動きがあったが、現在は崩御前を上回る水準まで急速に回復している。

2016年のGDP成長率は、前国王崩御の影響を受けつつも、前年の2.9%を上回る3.2%成長を実現した。タイ政府は、公共投資を呼び水とする民間投資の促進や輸出の拡大により、17年は4%の成長率もあり得るとの見通しを示している。

わが国のタイへの進出企業は4500社を超え、最近ではサービス産業への進出が目立つ。また、海外からの直接投資残高では、日本のシェアが約35%を占めており、わが国経済界への期待は依然大きい。

他方、タイ経済は産業の生産性向上や急速な少子高齢化への対応、優秀なエンジニアの育成等の課題を抱えている。優秀な人材育成に向けては、わが国政府がタイ教育省と協力し高等専門学校の導入推進に向けて支援を行っているほか、タイ政府でも、わが国の借款を活用した高等教育への支援が議論されるなど、対応策が検討されている。

また、同国がさらなる経済成長を遂げていくためには、カンボジア、ミャンマー、ラオスなどの周辺国を巻き込みながら、地域が一体となる経済圏を構築することが重要であり、域内のインフラ整備および金融面での連結性を高める政策を打ち出す必要がある。わが国としては、安倍首相の掲げる質の高いインフラ輸出を実現すべく、官民が連携して案件の受注に取り組むことが望ましい。

■ タイ政治の現状と今後の見通し

昨年8月の国民投票で可決された憲法草案に対して、ワチラロンコン国王から一部の条文修正要求があったが、今年2月に修正草案が再奏上されている。今後、国王が90日以内に憲法草案に署名することが必要であり、滞りなく手続きが進めば、17年5月中旬までに新憲法が成立する見通しである。しかし、10月以降には、プミポン前国王の火葬の儀やワチラロンコン国王の戴冠式等の行事が控えていることから、下院総選挙を経た新政権の発足までには時間を要するものと予想される。

タイ政府においても、一層の経済発展に向けて、安定的かつ民主的な政治運営が必要不可欠との認識が広がりつつあり、日タイ両国間のさらなる経済協力の拡大に向けても今後の動向に注目したい。

【国際協力本部】

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