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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年4月27日 No.3314 「新しい大人消費」の可能性について聞く -博報堂新しい大人文化研究所の阪本統括プロデューサーから/経済財政委員会経済政策部会

経団連の経済財政委員会経済政策部会(橋本法知部会長)は5日、消費喚起策にかかる有識者ヒアリングの2回目として、博報堂新しい大人文化研究所の阪本節郎統括プロデューサーから、シニア・高齢者の消費の現状と展望について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 「新しい大人」の心をつかむことが大切

高齢化に伴い、社会の「大人化」が進んでいる。単に人口構成上、シニア層が増えているのみならず、団塊世代からバブル世代にかけての中高年の人生観や価値観は、従来と比べて大きな変貌を遂げている。50歳を過ぎれば、会社、仕事、家族、そして子どものためのライフスタイルをいったん卒業して、いつまでも若々しく、自分らしく、生き生きとしていたいというとらえ方に移行している。健康予防に対する意識も高く、介護予防のために日ごろからの定期健康診断の受診や、適度な運動等を行っている。今後、要介護の認定率も変わる可能性を持っている。

年代別にお金と時間についての実感を調査すると、50、60歳代で「お金持ち・時間持ち」と感じる比率が大きい。背景として、子どもが大学を卒業、自立し、退職金も入り、夫婦で自由に使うことのできるお金が増えることが考えられる。

すでに市場では変化が起きており、広告の大量投下に支えられて、「プレミアムビール」や「4K薄型テレビ」等、高価格・高収益商品の消費が40~60歳代を中心に広がっている。

お金に関しても、アベノミクスを契機として、従来の貯蓄一辺倒から、運用で増やして消費に回すようになっている。お金をかけたい対象について、旅行・趣味・食が上位にランクインしている。

このように新たな価値観を持ち、望ましいライフスタイルを模索する中高年層を「新しい大人」と呼んでいる。「新しい大人」消費は、人口比換算で約60%を占めている。わが国企業としては、この層の商品、サービスの購買意欲を刺激できるような取り組みが不可欠である。

■ 成功への方程式

中高年を対象としたサンプル調査をもとにクラスター分析を行ったところ、消費を積極的に行う「イノベーターグループ」は男性で約4割、女性で約5割となった。このグループに対するテレビや新聞等のマスメディアを介したアプローチが重要である。加えて、このグループの消費の拡大が全体に波及していくことも期待できる。

アプローチ方法には3つの秘訣がある。1つ目は、シニア、定年、リタイア、セカンドライフといった既存の高齢者ワードを用いないこと、2つ目は今後の人生のあり方に希望を見いだすことのできる「人生これから感」を示すこと、3つ目は同年代の有名人の発信力を活かして、「新しい大人」のライフスタイルを提示することである。

実は、わが国の「新しい大人」の価値観は、欧州、米国、アジアの合計12カ国の同世代とも共通するものである。このため、わが国が「新しい大人」文化とそれを支える巨大な市場をかたちづくることができれば、諸外国の先行モデルとなり、日本企業が海外展開する際のモデルともなり得る。現在は「新しい大人」社会への移行の途上であり、わが国企業としては極めて大きなビジネスチャンスが到来しているとの認識を持つべきである。

【経済政策本部】

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