Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年4月27日 No.3314  「第2期教育振興基本計画の達成状況」と「第3期計画に向けた取り組みや課題」について聞く -教育問題委員会企画部会

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は14日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、(1)情報活用能力の育成 (2)英語教育改革 (3)双方向の留学生交流の推進――の各課題に関し、第2期教育振興基本計画の達成状況と第3期計画に向けた課題および政府の取り組みについて、文部科学省の各担当者から説明を聞くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 情報活用能力の育成に向けて
(生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室長・安彦広斉氏ほか)

教育の情報化には、「生徒の情報活用能力の育成」「教科指導におけるICTの活用」「校務の情報化による教員の負担軽減」の3つの側面があり、これらの推進を通じて教育の質の向上を目指している。

ICTの環境整備については、現在、第2期計画で目標とされている水準(PC1台当たり生徒3.6人)を再整理し、進捗状況の把握とともにさらなる整備を推進しており、第3期計画では、少なくとも授業で必要な時には1人1台のPCを活用できる環境にしたい。また、次期学習指導要領が3月31日に告示され、小学校でのプログラミング教育が2020年度から必修となるが、基本的操作技術の習得だけでなく、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につけるための学習となることを期待している。

■ 英語教育の抜本的改革
(初等中等教育局視学官・圓入由美氏)

アジア経済危機等が契機となり、1990年代後半から韓国や中国などアジア各国が英語教育改革に取り組んだ。それを受けて、日本でも2014年度から抜本的な英語教育改革に着手したが、アジア各国と比較すると10年以上遅れているといわざるを得ない。諸外国に比べ、日本では英語教育の開始時期が遅く、また4技能(読む、書く、話す、聞く)のうち、「書く」「話す」に課題があることが調査結果からも顕著にみて取れる。学習指導要領改訂により、2020年度から英語教育の開始時期が小学校3年生からに前倒しされるが、4技能をバランスよく修得できるような学習にするとともに、単なる英語力だけでなく自分の考えを発信できる力が育成される場となるよう、推進していきたい。

また、2019年度から全国学力・学習状況調査に英語を追加する予定であり、生徒の英語力を定期的に把握し、学校における指導体制の充実や教科書・教材の改善などに取り組んでいきたい。

■ 双方向の留学生交流の推進
(高等教育局学生・留学生課留学生交流室長・齋藤潔氏)

双方向の留学生交流の促進は、第2期計画でも示されているグローバル人材育成の手段の1つとして重要な位置づけとされている。政府は2020年までに、日本人の海外留学者数(送り出し)および外国人留学生数(受け入れ)をいずれも倍増させるとの目標を掲げており、統計データによる数値のばらつきはあるものの、これまで両者とも増加傾向にある。

しかし、送り出しでは短期留学生が、また受け入れでは語学学校に通う外国人が多く含まれているという現状があり、今後は“数”の増加とともに、“質”の向上のための施策を検討する必要がある。

<意見交換>

引き続き行われた意見交換では、経団連側から「第2期計画に掲げた目標の達成見込み、またそれを踏まえた第3期計画の目標設定をどう考えるか」との質問が出されたが、いずれの目標達成も難しいとの回答があった(図表参照)。そのうえで、「指標を掲げたうえで改革を確実に進めることが重要になる。第3期計画では、目標設定や施策についても省内横断的に検討し、PDCAサイクルを回していきたい」との意欲が示された。

第2期計画目標と達成状況
テーマ第2期計画の目標(抜粋)達成状況/見込み第3期計画に向けて
ICT環境
整備
・PC1台/3.6人
・無線LAN整備率100%
・PC1台/6.2人 (2016/3)
・26.1% (2016/3)
達成は難しい
第2期計画の目標を再整理。第3期計画では数値目標だけでなく、教員が必要な時に児童・生徒1人1台のPCを使える環境を目指す
英語能力
強化
・中学校卒業段階で
 英検3級以上 50%
・高等学校卒業段階で
 英検準2級程度~
 2級程度以上 50%
・中学36.6%
  (2016/3)
・高校34.3%
  (2016/3)
達成は難しい
全国学力・学習状況調査結果等を踏まえ中教審で基準を見直す予定。産業界からも目標値およびそれに向けた具体的施策も示してほしい
双方向の
留学生推進
2020年までに
・送り出し:
大学生6万人から12万人
高校生3万人から6万人
・受け入れ:
15万人から30万人
・送り出し大学生:
約8万4千人 (2015)
・受け入れ:
24万人 (2016)
達成は難しい
送り出しでは短期留学や長期留学、受け入れでは高等教育機関や語学学校などカテゴリー別に留学の目的や効果を検証し、数だけではなく、質の向上を目指す

【教育・CSR本部】