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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年4月27日 No.3314 21世紀政策研究所が連続セミナー「トランプ政権の政策のゆくえ」をスタート -第1回「トランプ政権の評価」

報告する久保研究主幹

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は20日、東京・大手町の経団連会館でセミナー「トランプ政権の評価~米国現地調査を踏まえて」を開催した。

トランプ政権の動向や米国政治社会の変化に対する関心が高まっていることから、同研究所では、連続セミナー「トランプ政権の政策のゆくえ」を開催し、企業活動に関連の深い個別の政策イシューについて、それぞれの最新情勢を報告していくこととしている。

そこで、同研究所米国プロジェクトの久保文明研究主幹(東京大学大学院法学政治学研究科教授)が、3月下旬にワシントンDC、ニューヨークを訪問し調査を実施した。

第1回となる今回は、米国現地調査の結果も踏まえた共和党、民主党、主要シンクタンク等によるトランプ政権の評価を中心に、トランプ政権についての総合的な説明を久保研究主幹から聞いた。概要は次のとおり。

■ トランプ政権の人事

大統領就任後、ホワイトハウスと各省庁の局長以上の人事(4000人規模の政治任用)を進めているが、現時点では、歴代の政権と比べて遅れたものとなっている。長官が上院で承認された省庁でも、副長官、次官、次官補等のポストがまったく埋まっていない状況である。遅れている理由として、(1)政界のアウトサイダーであったトランプ大統領に政官界の人的ネットワークがないこと(2)大統領就任後の政権移行の準備が選挙中まったく手つかずだったこと(3)トランプ反対・非協力を表明した人物を排除しているため共和党主流派からの任用が限られていること――がある。

そのなかで、連邦最高裁判所判事の任命において、共和党が議事妨害(フィリバスター)に関する規則を変更し、保守派のニール・ゴーサッチ氏を単純多数決(54対45)で上院承認(nuclear option)したことは、トランプ政権と共和党にとって大きな成果である。現時点の連邦最高裁判所を保守派多数とし、また、判事の任期が終身であることから、トランプ政権後も、また仮に民主党政権に変わっても、その影響は及ぶ。

■ トランプ大統領/トランプ政権を考える

トランプ大統領は、よくいえば「柔軟(flexible)」、悪くいえば「無原則」だ。

外交においても確実なものは皆無で、予測可能性の欠如、長期的で広範な戦略の欠如がみられる。しかし、「トランプ政権は何をするかわからない」には、相手側当事国を不安に追い込むというメリットがある。一方、同盟国に疑心暗鬼を抱かせるものでもある。

また、選挙戦当初から主張していた「アメリカ第一主義(America First)」から最近の「力による平和(Peace through Strength )」への傾きは、対NATO、対日本、対ロシア等の従来の発言の修正につながっており、方向性としては、「世界への関与」という伝統的な米国外交に戻りつつある。

■ トランプ政権の政策

トランプ政権の個別の政策を見通す時に、大統領権限について理解をしておく必要がある。米国の大統領には、立法・予算の権限がない(拒否権のみ)。政党の党首としての権限もなく、議員選での公認候補指名権がないことから議会への影響力の行使は難しい。また、米国の政党では党議拘束がきかない。

こうしたなか、現在の議会共和党では保守派が強く、なかでも「小さな政府」にこだわる原理主義的で妥協を嫌う勢力の強い反対により、トランプ政権はオバマケア改革案を3月に撤回した。トランプ政権と議会共和党のこのような関係は今後、インフラ投資、減税・税制改革といった政策の実現においても同様の影響・結果をもたらす可能性がある。

■ トランプ政権と日米関係

2月の日米首脳会談で日本側は十分な成果を挙げたといえるが、豹変するトランプ大統領を考えると、対中国や北朝鮮問題で何を交渉の材料とするのか不安が残る。トランプ政権が中国と、同盟国である日本を同列で扱うのか、また、安全保障と通商問題を絡めるのかを注視していく必要がある。

【21世紀政策研究所】

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