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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年5月18日 No.3315 21世紀政策研究所が連続セミナー「トランプ政権の政策のゆくえ」第2回を開催 -「トランプ政権の経済政策の評価」

説明するポーゼン氏

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は4月26日、東京・大手町の経団連会館でセミナー「トランプ政権の経済政策の評価」を開催した。

同セミナーは、トランプ政権の個別の政策イシューについて、それぞれの最新情勢を報告する機会として同研究所が開始した連続セミナー「トランプ政権の政策のゆくえ」の第2回となるものであり、米国ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長から、米国経済の現状と展望、トランプ政権下の経済政策、金融政策、通商政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 米国経済の現状と展望

米国の個人消費は堅調である。住宅部門も堅調で米国経済の回復を牽引している。一方、企業の設備投資は低金利にもかかわらず回復しておらず、トランプ政権の大きな課題である。

さらに深刻なことは、生産性が2004年以降、長期にわたり伸びていないことである。生産性が大きく変わらないままでは、米国経済の今後の成長も限定的となる。また、トランプ政権下で仮に3%ぐらいまで経済成長をしたとしても、それは持続不可能で一時的なものにとどまる懸念がある。

■ トランプ政権下の経済政策

トランプ大統領の経済政策の柱は減税と規制緩和である。トランプ政権の規制緩和は予算編成と同じぐらいの重要性を持ち、軽視してはいけない。

また、財政政策として大型の財政パッケージが出てくる。防衛、国境警備で予算を増やす一方、財源がないにもかかわらず大型減税をするとしている。

歳入面では、法人税の35%から25%への減税で1250億ドルの税収減となる。トランプ大統領はさらに法人税の15%への引き下げを打ち出しているが現実的ではなく、22~25%に落ち着くと私は見ている。加えて、所得税減税で400億ドルの税収減となる。歳出面では、防衛予算が300億ドル増、国境警備が100億ドル増である。インフラ投資は200億ドル増にとどまり、あまり大きな投資は期待できない。これは、目に見えず国民への訴求力のない電力網の改善等への投資をトランプ大統領が好まないためである。合わせて毎年2250億ドルとなる財政刺激策の効果はとても大きく、今後2年間でGDPを1.5%押し上げるとみられる。

規制緩和について、議会を通さずに法の解釈・運用の変更により実施できるため、大統領は大きな権限を持つ。天然資源開発、化学産業などは規制緩和から大きな恩恵を受けるだろう。また、エネルギー生産の拡大は多くの米国企業でコスト削減となり、短期的な経済成長にはプラスとなる。

■ トランプ政権下の金融政策

FRB(連邦準備制度理事会)は政治の影響の先手を打ったとのイメージを持たれるのを避けるため、予算が議会可決されるまでは利上げを控えるであろう。また、FRBの人事において、トランプ大統領は来年の議長・副議長の任命に加え、現在空席の3人の理事の新規任命もできる。これは利上げの牽制となる。

向こう2年間は四半期ごとの利上げが続くというのが大方の見方であるが、私は2018年、19年は1回の利上げのみであとは据え置くと見ている。FRBはトランプ大統領の政策にチャンスを与えると見るからである。

■ トランプ政権下の通商政策

通商政策についても、大統領は議会を通さずに変更ができる。例えば、NAFTAの正式脱退は議会に付議する必要があるが、部分改正であれば大統領の裁量でできる。したがって経済界として、トランプ政権が通商政策で何をするかは注視すべきところである。

米国の貿易赤字は今後さらに膨らむだろう。その理由の1つは、貿易赤字は過去の政策を原因として2、3年ぐらい経ってから現れるためである。トランプ政権第1期は過去にビルトインされた政策により貿易赤字が膨らむこととなろう。もう1つは、トランプ政権の経済政策による好景気・不景気のサイクルであり、これにより貿易赤字はさらに増えていく。

トランプ大統領は「貿易赤字を減らす」との公約が果たせず、苛立ちを感じるだろう。その結果、政権第1期の後半にトランプ大統領と議会がよりアグレッシブな通商政策を採ることを懸念している。

【21世紀政策研究所】

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