Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月1日 No.3317  ユニバーサル社会における企業の役割等について聞く -ミライロの垣内社長から/生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は5月17日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、ユニバーサル社会の実現にさまざまな面から取り組んでいるミライロ社長の垣内俊哉氏から、ユニバーサル社会のもとで生まれる新たな市場の可能性等について聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ バリアフリーとユニバーサルデザイン

「バリアフリー」は、障害者や高齢者等、特定の人を対象とする概念であり、日本以外の国では通じない。それに対し、「ユニバーサルデザイン」は国籍、年齢、性別、障害の有無を問わずすべての人を対象にした考え方である。世界中で多様な人々に配慮した製品やサービスの普及が進むなか、世界に先駆けて高齢化の進む日本は、ユニバーサルデザインの先進国となれる可能性がある。

■ 「バリア」から「バリュー」へ

「障害」に対する一般的なイメージは否定的なものであろう。しかし、私は学生時代のアルバイトでトップの営業成績を達成した経験がある。訪問できる会社は他の営業マンより限られていたが、車いすに乗っていることで相手に顔を覚えられやすいという強みがあったのだ。このように、たとえ不便だったとしても障害があるからこそできること、伝えられることもあると思う。

■ 向き合うべきバリア

日本では、駅の約8割がバリアフリー化されている。これは、米国(約5割)やフランス(約1割)等、他の先進国と比較しても高い数字である。このように、ハード面において日本は、世界的にみて進んでいる。しかし、人々の意識の面に関しては、改善の余地が大きい。

多くの健常者は、日常生活に不安や不自由を感じている人々のことを知らないがゆえに、無関心であるか、過剰反応してしまう。障害者や高齢者を理解し適切に対応することを、特別なことではなくマナーにしていく必要がある。このマナーを「ユニバーサルマナー」と名づけ、社会全体の文化にするため、研修事業を展開している。

また、障害者が街へ自由に出かけるために必要な情報(店舗・施設のバリアフリー状況、円滑かつ安全な移動ルートの情報など)も不足している。

障害(バリア)は、人ではなく環境にある。社会にあるさまざまな障害を1つでも解消したい。

■ 社会貢献だけでなくビジネスへ

これまで、障害者や高齢者などのニーズに配慮した取り組みは、社会貢献の枠組みで行われてきた。しかし、これからは、社会性と経済性の両輪で進めていくべきである。

高齢者、障害者、ベビーカーを必要とする3歳未満の子どもなど、日常生活に不便、不自由を感じている人は潜在的な数も含めると非常に多く(人口の約30%)、ビジネス対象になるだけの十分なボリュームがある。また、当人だけでなくその同行者も顧客となる。実際にさまざまな業界、企業で多様性に配慮した製品やサービスを展開し、新たな市場の創出につなげている。ユニバーサルデザインは企業が消費者に選ばれる理由になるということを理解し、ビジネスとして取り組んでほしい。

【産業政策本部】