Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月6日 No.3322  海洋開発に関する日本財団の取り組み聞く -海洋開発推進委員会

説明する尾形理事長

経団連の海洋開発推進委員会(山内隆司委員長)は6月23日、都内で会合を開催し、日本財団の尾形武寿理事長から、海洋開発に関する日本財団の取り組みについて聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 海洋開発に関する現状と課題

日本の排他的経済水域の広さは世界第6位であり、多くの海洋天然資源・エネルギー資源が分布していると推測されるが、世界市場における日本のシェアは限定的である。日本の海洋関係に専従する技術者は約2200人しかおらず、今後日本が海洋開発分野の世界市場のシェアを獲得していくうえで、原動力となる人材の獲得が急務となっており、これには産官学公オールジャパンでの連携が必要となる。

■ 人材育成に関する取り組み

当財団の事業の大きな柱である人材育成についての取り組みを紹介する。

(1)日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム

2015年の海の日の式典において、安倍首相から、海洋技術者の育成をオールジャパンで推進し、その数を2030年までに現在の約5倍の1万人まで増やすことを目指すとの発言があった。これを受け、海洋開発に携わる技術者の育成をオールジャパンで推進するための国内唯一の組織として設立されたのが、日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムである。現在33の企業、大学、公的機関が参加しており、経団連の海洋開発推進委員会の一部の企業にも参画してもらっている。

主な活動としては、浮体式洋上風力発電施設の見学や地球深部探査船「ちきゅう」への宿泊など現場体験型を含む多くのセミナーを開催している。2016年度は500人を超える学生が事業に参加した。また、企業の若手技術者向けに海外の専門家を招聘し、実践的なワークショップを企画している。

(2)そのほかの人材育成に関する取り組み

コンソーシアム以外にも国内外でさまざまな取り組みを行っている。

(国内)

海と日本プロジェクトでは、国内における“海離れ”の加速化や世界の海洋環境の悪化が起こっている現状を踏まえ、次世代を担う子どもや若者を中心に海との接点をつくるきっかけを提供しており、昨年は延べ約150万人が参加した。
そのほか人材育成のための基盤整備として、教材の作成や海洋構造物位置保持システムシミュレーターの整備、ネットワーク構築の一環としてノルウェーやスコットランドと人材育成・研究開発で連携している。

(海外)

当財団は1988年から海外の学生向けの奨学金支援を行っており、支援を受けたフェローは、世界140カ国に1236名、支援額は6070万USドルに上る。これら多くのフェローとのネットワークを構築・維持することが重要であると考えている。
また、日本財団ネレウスプログラムにおいては、ブリティッシュコロンビア大学やハーバード大学などが参加しており、将来の海洋についての調査研究や、人材育成、周知啓発などを行っている。

■ 今後の課題

今後の課題としては、出口戦略としての学生の受け皿の構築、若手技術者向けの基盤の整備、海外ネットワークを利用する企業の拡大などが挙げられる。

これから日本が海洋開発分野でリーディングカントリーとなるためには、今後相当数の技術者を輩出していく必要がある。企業の皆さまにはぜひコンソーシアムに参画いただき、海洋開発に関わる人材育成に協力してほしい。

【産業技術本部】