経団連の関連団体である企業市民協議会(CBCC、会長=二宮雅也損害保険ジャパン日本興亜会長)は6月20日、東京・大手町の経団連会館で、2017年度定時総会とシンポジウム「わが国のCSRの実態と今後の課題」を開催した。
CBCCでは、今年1月から2月にかけて経団連およびCBCCの会員企業を対象に「CSR実態調査」を実施しており、シンポジウムでは、二宮会長の開会あいさつに続き、関正雄CBCC企画部会長が同調査の結果を報告。その後、経営トップならびに各ステークホルダーの代表がパネルディスカッションを行った。
概要は次のとおり。
■ 開会あいさつ(二宮会長)
時代の変化や企業を取り巻く環境の変化にともない、企業が果たすべき役割や責任のあり方は変わってきている。2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は民間企業がその達成に向けて積極的な役割を果たすことを強く期待しており、経団連ではSociety 5.0の実現を通じてSDGsの達成に向けて貢献していく。また、それを強力に推進するため、「企業行動憲章」と同実行の手引きの改定を進めているところである。CBCCでも、わが国企業のCSRやSDGsへの取り組み推進に向けて、引き続き積極的に活動していく。
■ CSR実態調査結果報告(関企画部会長)
今回の調査は、経団連が09年に行った調査以来の詳細かつ網羅的な調査であり、167社から回答を得た。また、09年調査以降のCSRをめぐる新たな動きを踏まえ、ビジネスと人権に関する考え方や対応状況、SDGsへの対応状況や具体的な取り組み事例などについても質問した。調査結果は今後、CBCCのウェブサイト上で公表する。
具体的な調査結果として、例えばCSRに取り組む意義・目的については、多くの企業が「事業を通じた社会課題の解決への貢献」や「持続可能な社会の実現への貢献」と回答している。また、回答企業の約4割がSDGsに対応済み、または近く対応予定と回答している一方、対応分野は環境やエネルギー、産業が多く、今後、幅広い分野でのSDGs達成に向けた動きが展開されることを期待する。
■ パネルディスカッション
各テーマにおけるパネリストの発言の概要は次のとおり。
(1)CSRをめぐる世界的な潮流とわが国のCSRの実態
「多くの日本企業が、英国現代奴隷法など、人権やサプライチェーンに関する欧州・米国法令への対応に苦慮しており、それへの対応が課題である」(永井朝子BSR東京事務所ディレクター)
「投資家は、市場に一時的な変動をもたらすイベントリスクに加え、気候変動や人口動態など長期的なリスク(システマティックリスク)についても適切に管理し、利益を上げる企業に投資したいと考える。マテリアリティ(自社の重要事業)の特定と評価をしっかりと行うことが重要である」(鷹羽美奈子MSCI ESG Researchシニアアナリスト)
「『CSR実態調査結果』からは、日本企業が謙虚な姿勢で、かつ野心的にCSRに取り組んでいることが示されており『日本固有のCSR』が確立しつつあると考えられ、非常に興味深い。今後、日本企業はこれを強みとしてマネジメントに活かすべきだ」(スコット・デイヴィス立教大学経営学部教授)
「当社にとってCSRとは企業理念の実践そのものである。そのため、私自身が全世界の事業会社を回り、従業員との直接対話を通じて企業理念の浸透を図っている」(立石文雄オムロン会長・CBCC副会長)
(2)SDGsへの対応に向けたわが国企業の今後の課題
「SDGs達成に向け、企業は、責任ある倫理的な行動を取ることに加え、変革・イノベーションを通じて共有価値を創造(経済的・社会的価値の両立)すべきである」(黒田かをりCSOネットワーク事務局長・理事)
「事業活動から得られる社会的価値やステークホルダーから期待される対応をSDGsの17の目標とリンクさせ、SDGsの達成に向けた取り組みを進めている」(立石氏)
「企業には、事業のなかでSDGsの達成に資するものは何かを特定し、それによりどのくらい利益が上がったかなどの情報を開示してほしい」(鷹羽氏)
「日本企業にとって、SDGsを活用して新たなビジネスモデルを構築していくことが成長のカギである」(デイヴィス氏)
「多様なステークホルダーとより一層連携し、課題の特定・解決に取り組むことを期待する」(永井氏)
【教育・CSR本部】