経団連は6月29日、都内で宇宙開発利用推進委員会企画部会(岡村将光部会長)・宇宙利用部会(高田和宏部会長)合同会合を開催した。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の高見牧人参事官(当時)から「宇宙産業ビジョン2030」について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 宇宙産業ビジョンの策定
現在、宇宙産業では、宇宙技術の革新と、ビッグデータ・AI(人工知能)・IoT(Internet of things)といった最新技術が結合することで新たなパラダイムシフトが起こっている。宇宙産業は新たな成長産業を創出するフロンティアであり、第4次産業革命を進展させる駆動力となる。こうした観点から、宇宙産業の振興を図り、他産業の成長や新産業の創出にもつなげるという考えのもと、「宇宙産業ビジョン2030」を策定した。ビジョンでは、宇宙産業全体の市場規模(現在1.2兆円)を2030年代早期に倍増させることを目標としている。具体的には、宇宙利用産業、宇宙機器産業、海外展開、新たな宇宙ビジネスを見据えた環境整備の観点から課題と対応策をまとめた。
■ 宇宙利用産業
衛星データは近年、農林水産業、インフラ維持管理、交通、物流、金融・保険をはじめさまざまな分野に活用され、新たなサービスが創出されつつある。しかし、データの継続性不足、入手経路のわかりにくさなどにより、十分に活用されていないといった課題がある。政府衛星データのオープン・フリー化やモデル実証事業を推進することで、利活用の促進を図る。
■ 宇宙機器産業
宇宙機器をめぐっては、国際的な技術競争が激化している。調達方式の改善を図るなど、国際競争力の強化につながる仕掛けをつくるとともに、小型ロケット打ち上げのための射場整備に向けた取り組みを進めることで、新規参入者への支援を行う。
■ 海外展開
海外展開については、宇宙システム海外展開タスクフォースの取り組みを中心に、地域・国別および課題別にきめ細かく取り組みを進めている。海外への売り込みでは、相手国のニーズに応じたパッケージ化が必要となる。各国との長期的な人脈形成に向けプロジェクトマネージャーを新設する。
■ 新たな宇宙ビジネス
海外では、ベンチャー企業の動きが活発化するなか、わが国においてもベンチャー企業等の新規参入を後押しするため、リスクマネー供給の拡大、宇宙ビジネスアイデアコンテストの開催、新たなビジネスを見据えた制度整備の検討等を進めていく。
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先ごろ開催された宇宙開発戦略本部においても、安倍首相から(1)宇宙産業の国際競争力強化に向けた宇宙基本計画の工程表の改訂(2)準天頂衛星の4機体制の実現(3)人工衛星からの情報を活用した成功事例の創出(4)宇宙ゴミ(デブリ)への対応――等について発言があった。宇宙産業の振興に向けて今後も取り組みを進めていく。
【産業技術本部】