経団連(榊原定征会長)は9月19日、「平成30年度税制改正に関する提言」を公表した。提言では、事業再編の円滑化、データの高度活用を促す税制措置の整備、行政手続の簡素化・IT化、所得拡大促進税制の改組、土地・住宅税制などが主要な課題となっている。
1.未来投資戦略2017に関連する税制措置の整備
名目GDP600兆円の実現に向けて、デフレからの脱却と経済再生のために「未来投資戦略2017」で掲げられたSociety 5.0を確実に実現させ、ビジネス環境を改善することが重要となる。
その観点から、具体的には、まず、「事業再編の円滑化」について平成29年度税制改正で導入されたスピンオフ税制に関する適格要件の緩和や、産業競争力強化法の見直しに伴う税制措置の新設・延長、株対価M&Aの場合の株主の譲渡損益に対する課税の繰り延べ措置の導入を求めている。
また、Society 5.0を推進する観点から、センサー、工作機械、サーバー、ソフトウエア、セキュリティー対策サービスなど、関連する資産・役務を購入した場合における税制上のインセンティブの導入や、現在、政府において法人税や地方法人二税等の電子申告の利用率を100%とするための制度整備が検討されているが、納税者の事務負担軽減になるよう、電子申告の対象となる書類や義務化の施行時期について、納税者の準備期間を踏まえた合理的な設定を求めた。
あわせて、地方税の共通電子納税システムの導入やe‐Tax、eLTAXの利便性向上のための電子署名の簡素化等も不可欠とした。さらに、所得拡大促進税制については、賃金のみではなく、従業員に対する教育訓練費も対象に含め、幅広い人材育成へ支援するかたちで改組を検討するよう求めた。
2.土地・住宅税制
平成30年度は、3年に1回行われる土地や家屋の評価替えの年に当たるが、近年の三大都市圏や地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)の地価上昇により、評価替えで固定資産税の負担が大きく上昇するおそれがある。そのため、負担の上昇を抑えるべく、商業地等にかかる固定資産税の据置特例および条例減額制度や新築住宅にかかる固定資産税の軽減特例の延長を求めた。
3.法人課税・国際課税の諸課題
法人課税では、償却資産にかかる固定資産税の抜本的見直しや電気・ガス供給業における収入金課税の見直し、印紙税の一層の負担軽減を求めている。
また、国際課税では、平成29年度税制改正で見直しを行った外国子会社合算税制について、外国関係会社が組織再編する際に発生するキャピタル・ゲインが引き続き合算課税の対象とされるなど、積み残しの課題への手当てを求めた。
提言ではこのほか、地球温暖化対策税の廃止を含む抜本的な見直し、森林吸収源対策に関し、平成29年度与党税制改正大綱の記述を踏まえた検討、自動車関係諸税の負担軽減、退職年金等積立金にかかる特別法人税の廃止、NISA・ジュニアNISAの恒久化・利便性向上、生命保険料控除制度の拡充、上場株式等の相続税評価額の見直し等についても実現を求めた。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/067.html
【経済基盤本部】