Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月19日 No.3335  「今後の地球温暖化対策に関する提言」を公表 -パリ協定のあり方とわが国ならではの対策の方向性を提示

昨年11月、新たな気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」が発効するも、今年6月には、米国が協定からの脱退を表明するなど、同協定の実効性と国際的公平性に不透明さが増している。一方、国内では、2030年度の中期目標達成に向け、取り組みが進められているものの課題も少なくない。さらに、30年以降の長期戦略の策定に向け、今後、議論の本格化が見込まれている。

こうしたなか、経団連(榊原定征会長)は10月17日、「今後の地球温暖化対策に関する提言」を取りまとめ公表した。

■ 米国のパリ協定脱退表明の評価と今後の対応

パリ協定は、すべての主要排出国が地球温暖化対策に取り組むことを約束する、歴史的な国際枠組みである。米国の脱退表明は、この前提を崩すものとして極めて残念である。米国の協定残留を促すうえでも、米国との新たな技術協力を模索しながら、他の主要国とともに米国に働きかけるべきである。

まずは先進国と途上国の二分論的な差異化の動きを牽制し、パリ協定の実効性と国際的公平性の確保に努める必要がある。

また、地球規模での温暖化対策を促す観点から、JCM(二国間オフセットメカニズム)の利便性向上や、国際貢献を通じた削減貢献分の「見える化」、革新的技術開発での協力、先進国・新興国を問わず幅広く資金拠出を促す仕組みの構築も重要となる。

■ 中期目標「2030年度26%減」達成に向けて

国内においては、「2030年度26%(13年度比)減」という中期目標の達成に向け、官民挙げて取り組むことが求められる。経済界は、引き続き「経団連低炭素社会実行計画」を通じて貢献していく。

中期目標達成のためには、目標算定の基礎となった、30年度のエネルギーミックス(原子力=20~22%、再生可能エネルギー=22~24%、火力=56%)を着実に実現するとともに、部門ごとのフォローアップを実施すべきである。特に、家庭部門については、環境省が責任を持って、実効性ある国民運動を推進する必要がある。

■ 長期戦略の策定に向けた基本的な視点

長期大幅削減にあたっては、わが国の対策のあり方として、地球規模での温室効果ガスの大幅削減への貢献を示すことが重要である。

まず、長期戦略の前提として、(1)環境と経済の両立(2)さまざまな不確実性に柔軟に対応できる仕組みの構築(3)長期目標「2050年80%減」は、「方向性」を示すものであることの明確化(4)エネルギー政策等との整合性の確保――を掲げている。

また、わが国ならではの対策の方向性として、(1)グローバルな貢献(2)製品・サービスのライフサイクルや企業のバリューチェーンを通じた貢献(3)イノベーションの創出――を目指すべきだとしており、この方向性は、「経団連低炭素社会実行計画」と合致するものである。

■ カーボンプライシングに対する基本的考え方(補論)

現在、環境省において排出量取引の導入や炭素税の拡充に向けた検討が進められていることを受け、カーボンプライシングに対する考え方を示している。

わが国において、エネルギーの全体コストは国際比較をすると高く、追加的に炭素価格を引き上げる必要性は乏しい。加えて、諸外国の事例をみても、排出量取引は運用が難しく、炭素税も価格効果が極めて小さいといった重大な欠点があることから、その導入・拡充には引き続き反対である。

政府には、産業政策の視点も踏まえつつ、経済界の自主的取り組みを軸に、現実的で実効性のある政策を展開することを期待したい。

【環境・エネルギー本部】