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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月26日 No.3336 内外経済の動向と今後の見通しについて説明を聞く -日本経済研究センターの岩田理事長から/経済財政委員会

経団連は10月6日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会(柄澤康喜委員長、永井浩二委員長)を開催し、岩田一政日本経済研究センター理事長から「内外経済の動向と今後の見通し」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ アベノミクスと日本経済の現状

5年目となるアベノミクスは、3つの局面に分けられ、現在は第3ステージにあたる。政府は、働き方改革に加えて、3~5歳児の幼児教育・保育の完全無償化、大学へのアクセスの確保を含む教育改革を前面に打ち出している。後者の財源のあり方について、年末にかけて消費税率引き上げ分の使途見直し以外に、こども保険や所得連動返済型奨学金の導入の是非が焦点となると思われる。

足もとで、株価は2万円を超え、円高は是正されている。企業収益は過去最高水準で推移し、完全失業率も極めて低い。日本経済研究センターは、2017年度の成長率を1.5%、18年度を1.0%と予測している。

■ 新たな金融政策の枠組みの評価

日本銀行が行っている「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、従来の量的・質的金融緩和から金利重視に転換するレジームシフトである。日本経済研究センターは、かねて量の拡大は限界を迎えると主張しており、現行の金融政策の枠組みに関して3点指摘したい。

1点目に、国債の買い入れ額は、民間保有の国債を割高で購入することがないよう、毎年の新規国債の発行額に相当する40兆円程度へ縮小する必要があるのではないか。

2点目に、年間6兆円のETF(上場投資信託)買い入れも、コーポレートガバナンスや利益相反等の観点も踏まえ、縮小が望ましい。

3点目に、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の持続可能性が懸念される。現在イールドカーブはフラット化し、長短金利差による「利ざや」の確保を前提とした金融機関の収益環境は厳しい状況にある。地方銀行を中心に金融機関の体力がいつまで耐えることができるかが今後の焦点と考える。

■ 米国の「リベラルな国際経済秩序」からの「大撤退」

トランプ大統領の経済対策は、ニクソン大統領の保護主義とレーガン大統領の減税のミックスである。戦後米国主導で形成した「リベラルな国際経済秩序」から、自ら撤退しようとしている。

例えば、貿易政策については、国家主権を優先し、一方的な保護主義も辞さない構えであり、WTOルールから乖離しようとしている。環境政策では、パリ協定からの離脱を行った。加えて、金融規制の緩和の推進や、非移民就労ビザの停止等、実体経済に弊害を及ぼしかねない政策も進めようとしている。

先般、法人税の20%への引き下げや、個人所得税の簡素化・減税等を柱とした税制改革案が発表されたが、今後10年間で減収となる約2.4兆ドルをどう穴埋めするかは明らかではない。

■ バブル崩壊の懸念と国際金融市場への影響

FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)は今後、金融引き締めに転じ、バランスシートを縮小する見込みである。この状況下で、米国の株価や商業用不動産価格は、バブル崩壊前の水準まで上昇しており、いつバブルが崩壊してもおかしくない。

米国でのバランスシートの縮小と金利引き上げは、ドル調達が厳しくなることを意味する。新興国では、通貨安、ドル高が進行し、約4.5兆ドル規模のドル建て債務の膨張が懸念される。

とりわけ、中国の企業債務は日本のバブル期のピークを上回り、警戒が必要である。

【経済政策本部】

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