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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月11日 No.3345 自動運転の現状と展望 -東京大学大学院の鎌田教授が講演/産業競争力強化委員会企画部会

経団連は12月15日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会企画部会(齊藤裕部会長)を開催し、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鎌田実教授から「自動運転の現状と展望」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 自動運転の意義

(1)安全性の向上

交通事故の9割以上がヒューマンエラーを原因としており、自動運転の実現は交通事故の削減に貢献する。第10次交通安全基本計画において定められた目標(2020年までに死者数2500人以下、負傷者数50万人以下)の達成に向け、警察庁は、従来の交通安全教育に加え、自動運転へ期待を寄せている。

(2)ドライバー不足への対応

タクシー、トラック業界等で顕在化しているドライバー不足への対応策として、無人自動運転への期待が高まっている。警察庁のガイドラインでは、ドライバーは車両にいなくてもよいが遠隔監視・操縦を行うことが必須とされている。コスト削減の観点から、1人で何台の車両を遠隔監視できるかということが課題になる。

(3)付加価値の創出

海外では自動運転の実現により、運転しないで別のことをできるという点に重きが置かれている。例えば、長距離走行中に仕事をすることができれば、生産性向上や労働条件の改善等につながる。
また、自動運転の実現により街づくりが一変する可能性もある。交通量と道路容量の関係を見直して道路空間を再分配することにより、余った土地の有効活用が可能となる。例えば、幹線道路などの複数車線を削減し、空いた土地をサイクリングロードや太陽光パネルの設置に活用することなどが想定される。

■ 自動運転の実用化に向けた取り組みの現状

「官民ITS構想・ロードマップ2017」では、20年度までの高速道路での準自動パイロットの市場化や限定地域での無人自動運転移動サービスの実現等が掲げられている。この目標の実現に向け、高速道路でのトラックの後続無人隊列走行やラストマイル自動運転などの実証実験が予定されている。

また、経済産業省と国土交通省の「自動走行ビジネス検討会」において、自動走行の実現に向けて日本が競争力を獲得していくにあたり、企業が協調すべき重要9分野が特定されたことは注目に値する。自動運転の普及には、技術開発や制度整備に加え、事業化に向けたコスト削減や社会受容性の向上も求められる。

■ 国際競争に勝つための戦略づくり

国内外で自動運転の市場化に向けた取り組みが急速に進展しているなか、日本として、技術開発のみならず、国際競争を勝ち抜くための戦略が求められる。日本が国際基準・標準づくりを主導できるよう、産業界の横連携のみならず、大学や中立研究機関等を巻き込んだオールジャパンの体制構築が望まれる。

【産業政策本部】

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