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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月1日 No.3352 最近の通商政策めぐり経産省と懇談 -通商政策委員会

経団連の通商政策委員会(早川茂委員長、中村邦晴委員長)は2月7日、東京・大手町の経団連会館で、経済産業省の柳瀬唯夫経済産業審議官との懇談会を開催した。中村委員長の司会のもと、柳瀬経済産業審議官から、最近の通商政策と今後の方向性について説明を聞くとともに、参加者との間で活発な意見交換が行われた。柳瀬経済産業審議官の講演の概要は次のとおり。

■ WTO

発足当初のWTOは、それまで政治問題化しがちだった二国間貿易摩擦の問題を、手続きに則って処理するという機能的役割を果たしていた。しかし、今や参加国が164カ国・地域に増加し、コンセンサス方式による新たなルールづくりは困難を極めている。特に米国は、WTO上級委員の選考プロセスに反対し各国との溝を深め、昨年12月の第11回閣僚会議でもWTOの問題点を数多く指摘するなど、イデオロギー的にWTOに対して否定的な側面が見受けられる。しかし実際には、米国は自国にとって有利なやり方を追求しており、WTOの枠組み変更の主張も辞さないというプラクティカルな姿勢もみられる。

紛争処理の面でもWTOの果たす役割は依然として大きいし、like-minded countries(有志国)での合意も形成されている。例えば、日本は豪州・シンガポールとともに有志国閣僚会合を開催し、電子商取引に関する新しいルールについて、全70カ国・地域が参加する共同声明を発出した。このように、有志国主導でルールを形成し、徐々に他国に広げていくやり方は、国際的ルール形成にとって今後ますます有効になる。

■ TPP11と日EU EPA

トランプ政権成立を契機に、日本の通商政策の戦略目標は、TPP実現それ自体から、保護主義の流れを阻止する戦略的価値の追求へと変化した。TPP11は、そのための高い水準のルールを維持している。署名後は、各国が国内での批准の手続きを早急に進めることが重要だ。ダボス会議でのトランプ大統領の発言は、現状のTPPに戻る旨の表明とはいえないものの、以前と比較すれば、ソフトな姿勢に変化しているといえる。

また、昨年末に合意した日EU EPAは、来春の欧州議会選挙前までには批准にこぎ着けたい。現在は、投資保護と紛争処理手続が争点として残っているが、まずは早期発効を優先させるべきである。

■ 中国

中国の鉄鋼過剰生産能力問題は、鉄鋼のみならず、半導体、自動車、ロボット等、他の分野でも将来同じ問題が起こり得る点で深刻である。日米で同じ問題意識は共有しているものの、両国のアプローチ方法は異なる。米国にはWTOの枠組みで問題解決を図るべきことを日本は主張すべきである。こうした市場歪曲的措置への対応の観点からも、TPP11や日米欧三極貿易大臣会合の戦略的意義は大きい。

昨年の日中首脳会談では、第三国における日中民間協力を進めていくことで一致した。第三国での中国のプロジェクトについては、必ずしも安全保障に関連がなくてもラベルを貼られがちだが、ビジネス面で有益な日中協力も多い。企業が具体的なプロジェクトを進める際には、政府としても協力する所存である。

【国際経済本部】

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