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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月8日 No.3353 イノベーション・ナショナルシステムの構築に向けた課題について -甘利衆議院議員が講演/未来産業・技術委員会

経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で、未来産業・技術委員会 (山西健一郎委員長、小野寺正委員長)を開催し、甘利明衆議院議員から、イノベーション・ナショナルシステムの構築に向けた課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。甘利氏の説明の概要は次のとおり。

■ ルールづくりの重要性

ルールづくりは重要だ。例えば、一定比率以上のEVの販売を義務づける規制を設ければ、内燃機主流の自動車産業の土俵を替えてしまえる。また、自国のシステムを使わない自動運転車は走行禁止にすることもできる。

TPPは、参加国の関税を削減することも大事だが、ルールづくりの側面も非常に重要だ。例えば、データ・ローカライゼーションや技術の強制移転を禁止しており、知的財産も保護される。TPPは世界最高のルールで構成されている。これが適用されれば、当事国の国有企業と他国の民間企業がイコールフッティングになる。国営企業と私企業が平等に戦えるルールを構築することが大事だ。

■ イノベーション・ナショナルシステムの構築に向けて

国際的には、研究開発投資が多い国ほど成長率が高いが、日本は研究開発投資が多いわりに成長率が低い。理由は、応用・実証研究が多くて基礎研究との協働が少ないことに加え、自己完結型で死蔵している知的財産が多いためだ。オープンイノベーションを進めれば、死蔵している知的財産を相互に有効活用できる。

イノベーション・ナショナルシステムを構築するには大学改革を進めなければならない。大学は、教鞭をとったり研究を進めたりする場であるだけでなく、高度な知識産業としての性格もあり、後者については大学に経営の感覚が必要だ。国立大学の収入面は運営費交付金や授業料に頼ることから、知的財産や土地等の資産を有効活用できていない。

どの大学のどの研究者に、どれだけのインプットである交付金が渡り、アウトプットである論文が生まれ、アウトカムである知的財産や論文引用数につながるかを把握できれば、コストパフォーマンスがわかる。見える化、データベース化すれば、予算の効率を上げ、企業とのコラボがしやすくなる。

来年度から始まる国立大学経営改革促進事業費を使い、学長のリーダーシップによるガバナンスを強化してほしい。優秀な研究者に日の目を当てることもできる。成功モデルをつくりたい。

政府には、統合的なイノベーション戦略を策定するための真の司令塔が必要だ。また、ルール形成も戦略的に進めていく必要がある。

【産業技術本部】

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