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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月15日 No.3354 米国通商政策に関する懇談会を開催 -K&L Gatesパートナーのエッティンガー氏と意見交換/アメリカ委員会企画部会

NAFTAの再交渉等、米国においてさまざまな通商政策が進められ、日本企業への影響が懸念されている。

そこで、経団連のアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)は2月23日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、K&L Gatesの通商ポリシー・プラクティスのリーダーを務めるステイシー・J・エッティンガー弁護士から、NAFTA再交渉を中心とするトランプ政権の通商政策課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ NAFTAの再交渉

NAFTA再交渉は、米国が当初、他の2カ国と合意した交渉スケジュールが延長され、4月ごろまで再交渉会合が続く可能性が濃厚である。交渉の行方、特に米国のNAFTAからの離脱可能性を探るうえで参考になるとみられているのは、TPA(貿易促進権限)の延長の有無である。TPAの手続きによると、大統領がTPAの定める手続きに従って交渉した通商協定について、米国内で執行する法律は、議会の承認・不承認の決議(内容の修正を伴わない)にかけられるが、TPAは6月末に失効する。現在のTPAを延長するためには、大統領が4月1日までに議会に対して延長を要請する必要があるが、延長を要請しない場合、大統領のNAFTA離脱の意向を示すとの見方もある。

そもそも大統領にNAFTAを離脱する法律的権限があるかどうかについては、法律に明文規定がなく、先例もないため、最終的には裁判所の判断を待つことになる。仮にこのような権限が認められた場合であっても、一方で、NAFTA上の義務を国内法化する米国国内法が存在し、これを失効させるためには、別途、議会による法律の廃止・改正の手続きが必要である。よって、大統領がNAFTA離脱手続きを行ったものの、議会が国内法を廃止等しない場合、NAFTAからは離脱しつつも国内法としての効力は存続するという奇妙な状態に陥る可能性がある。こうした法的問題をどのように扱うかも今後の課題である。

■ 対米外国投資委員会(CFIUS)の審査厳格化

CFIUSによる対米投資に伴う国家安全保障リスクについての審査は近年、厳格化・拡大化する傾向にあるが、さらに審査を厳格化・審査対象を拡大する改正案が上院・下院に提出されている。

例えば最近、多数の個人情報を伴う電子商取引・ヘルスケア・金融分野等の企業にかかる買収・投資案件はCFIUSによる審査が厳格化される傾向にあり、また、対象会社の事業自体は国家安全保障に直接関係しないとみられたものの、所在地が軍事施設に近接するという理由で取り上げられる案件もあるなど、「安全保障」の概念が広く解釈される傾向にもある。改正法案は、対象会社を「支配」するまでには至らないものの主要な技術情報やノウハウ等へのアクセスが可能といったように、いわゆる「パッシブ投資」に該当しない場合についてもCFIUSによる審査の対象とする旨規定する一方、一定の国の投資家からの投資について審査が除外され得るとする規定も含まれる。また、外国政府が関わる外国投資家の買収・投資等については、申請の義務化が提案される。中国の存在拡大と取引の複雑化を背景に、共和党・民主党議員ともにCFIUS審査の厳格化を支持する議員は相当数いるため、何らかの改正法案が成立する可能性は高いといえるであろう。

■ 中国に関する通商関連措置

商務省は鉄鋼・アルミニウム輸入に関する232条調査に関する大統領への各調査報告書のなかで、鉄鋼・アルミニウム輸入が米国の安全保障を侵害する脅威であると結論づけた。また、中国の知的財産にかかる301条調査も近日中に調査結果が発表される予定である。いずれの調査についても、実際にどのような措置を講じるかは大統領の裁量に委ねられるものの、例えば、米国の措置に対して中国が報復する懸念もあり、引き続き動向を注視する必要がある。

【国際経済本部】

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