1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2018年4月12日 No.3358
  5. 「デジタル化時代のものづくり」強い現場と強い本社の両立を

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月12日 No.3358 「デジタル化時代のものづくり」強い現場と強い本社の両立を -藤本東京大学教授が講演/産業競争力強化委員会

経団連は3月28日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)を開催し、東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏教授から、「デジタル化時代のものづくり」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 「強い現場」と「強い本社」の両立

上空・低空・地上のアナロジー

電子が産業を動かす第3次産業革命は、従来、重さのない世界であるICT層(「上空」)と、重さのある世界であるフィジカル層(「地上」)が別々に発達してきた。21世紀に入ると、「上空」ではグーグルやアップルといった米国プラットフォーム盟主企業が台頭したが、「地上」では現場力に強みを持つトヨタ等のものづくり企業が競争優位性を保ってきた。そして、2010年代になると、「地上」と「上空」の2つの層を連結する「低空」(サイバーフィジカル・インターフェース層)が形成され、この「低空」が主戦場の1つとなった。

デジタル化時代においても現場力の重要性は変わらないが、現場力のみでは「上空」や「低空」とつながる激しい競争を勝ち抜くことは難しい。「強い現場」に加え、潮目を読む「強い本社」の戦略(特にアーキテクチャーの位置取り戦略)が不可欠となる。

例えば、村田製作所では、デジタル化の中心となるセラミックコンデンサーについて、インターフェースの外側はオープン化し、中身の技術はブラックボックス化するという「中クローズド・外オープン」戦略を取ることにより、国際競争力を強化した。また、ダイキンは空調専用のインバーター技術において同様の戦略を取り、中国における市場シェアを拡大した。このように、デジタル化時代においては、「強い現場」と「強い本社」の両立が重要となる。

■ 「現場発の成長戦略」の必要性

政府の成長戦略は規制改革や投資減税を通じた生産性の向上に焦点を当てているが、「現場のにおい」がしない点が気になる。「生産性の向上」と「有効需要の創出」が成長のための両輪であり、それらの主体は企業の現場である。したがって、「よい現場」を残し強化することに言及しない成長戦略は不完全であるといえる。

■ 検査不正と現場力

日本を代表する製造業の検査不正により、日本企業の現場力は低下したとの報道がなされているが、現場の実態や品質管理の仕組みを知らない人の暴論というほかない。日本では検査の合格範囲(公差)が厳しいため、公差から外れた製品(内部不良)であっても、顧客・社会の許容範囲から外れるケース(外部不良)はほとんどない。もちろん検査不正は深刻なコンプライアンス問題であり、適切に対処しなければならない。しかし、検査不正と現場力低下は別問題であり、両者を混同すべきではない。

【産業政策本部】

「2018年4月12日 No.3358」一覧はこちら