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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月12日 No.3358 IASBのアンダーソン理事、鶯地理事から国際会計基準をめぐる最近の動向を聞く -金融・資本市場委員会企業会計部会

経団連は3月16日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会企業会計部会(野崎邦夫部会長)を開催し、国際会計基準審議会(IASB)のニック・アンダーソン理事、鶯地隆継理事から、国際会計基準をめぐる最近の動向を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 国際会計基準をめぐる最近の動向

アンダーソン理事

鶯地理事

(1) 基本財務諸表プロジェクト

現在、財務業績報告書(Statement of Financial Performance)における段階利益の表示方法が多様化しており、比較可能性を高める取り組みを求める声が投資家から多く寄せられている。IASBでは、「金利及び税金控除前利益」(EBIT)に至る段階利益の表示方法として「投資から生じる収益・費用」の区分を新設し、「企業が保有しているその他の資源から、おおむね独立して、個別にリターンを生み出すような収益・費用」を区分表示する案を検討中である。

さらに、「関連会社及び共同支配企業の純損益に対する持分」に関する投資家の関心も強まっていることから「関連会社等に対する持分法投資損益」の表示方法についても見直しを検討している。企業の事業活動にとって「不可分な」関連会社等と「不可分でない」関連会社等とに分けて、前者の投資損益を事業活動の成果(事業利益)の一項目として表示するとともに、後者の投資損益を先述の「投資から生じる収益・費用」の一項目として表示する案などを検討中である。

(2) 「のれん」の会計処理

「のれん」の減損損失のタイミングが遅すぎる、また、その金額が少なすぎるという「too little, too late」の問題に対処するため、IASBは「含み(Headroom)アプローチ」の導入を検討している。「のれん」の減損損失がより早期に認識されるよう、買収した企業や事業の資金生成単位ごとに算定する回収可能額をもとに算出した「当該生成単位の含み益」が前期から当期にかけて減少した場合に、その減少額を「取得のれん」の減損損失として認識するというアプローチである。「取得のれん」がその買収時から日々減っていく事実を考慮し、当該含み益の減少額を「取得のれん」の減損とみなすものである。

<意見交換>

意見交換では、石原秀威部会長代行から、財務業績報告書をはじめとする財務報告は、企業経営のために作成している面もあり、投資家と企業経営の双方の観点から報告書の形式を見直すべきだと前置きしたうえで、(1)企業が投資する資産は有機的に事業に使用されており、企業の事業活動と分けるかたちで「投資から生じる収益・費用」を区分する項目を設けるべきでない(2)持分法投資損益を事業活動に不可分なものと不可分でないものに区分することも要求すべきではない(3)「含み(Headroom)アプローチ」は実務上の課題が多く、かねて経団連が選択制での導入を主張している「償却+減損」のアプローチの方が実務的に極めて明快であり、会計処理としても安定的である――と強調した。

このほか出席者からは、「含み益の減少額を『取得のれん』の減損損失とみなす根拠が乏しい」「減損テストの改善に大きな進展がみられないなら、『償却+減損』アプローチを再検討すべきだ」などの意見があった。

【経済基盤本部】

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