Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月1日 No.3390  規制改革の現状と推進体制のあり方聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

経団連は11月28日、都内で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催した。政策工房の原英史社長から「規制改革の現状と推進体制のあり方」について講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ これまでの規制改革の取り組み

米カーター政権における航空規制の緩和を出発点に、先進諸国で市場経済を重視する動きが強まるなか、日本でも1980年代に土光臨調(第二次臨時行政調査会)からの流れを受けた中曽根内閣において、規制緩和や民営化の取り組みが行われた。90年代に入ると、細川内閣・平岩研究会(経済改革研究会)が「経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限」との方針を示したこともあり、航空、タクシー、通信、金融、電力等の分野で進展がみられた。

なお、同研究会の報告を受けて、95年に「行政改革委員会規制緩和小委員会」が設置されて以降、3年ごとに改組を繰り返し、現在まで規制改革の第三者機関が続いている。

2001年に誕生した小泉内閣は、郵政や政策金融等の民営化に注力するとともに、教育、医療、保育、農林水産等の分野に重点を移した。しかしながら、こうした社会的分野では利害関係者の抵抗が激しく、規制改革は徐々に停滞を始めた。

その後、規制改革を重点課題としたのは第二次安倍内閣以降である。同内閣は長年にわたり進展しない課題を「岩盤規制」と呼び、規制改革会議や国家戦略特区等を設置して取り組んでいる。その結果、エネルギー、農林水産、医療・薬、保育、教育、電波、通信・放送、金融、民泊、データ利活用、外国人材、労働等の分野で一定の成果を挙げたが、残された課題も少なくない。

■ 今後の課題と推進体制のあり方

今後、次の3つの課題に同時並行で取り組まなければならない。

1つ目は岩盤規制改革である。わが国では官僚機構が強く、事前規制型の行政が色濃く残る。1997年の行政改革委員会「最終意見」の趣旨を徹底し、事後チェック・監視型の行政に転換する必要がある。

2つ目は格差とグローバリズムへの対応である。社会保障や雇用、教育等の仕組みを抜本的に改革するとともに、移民政策についても検討が必要ではないか。

3つ目は第4次産業革命・Society 5.0への対応である。国家戦略特区の延長上で、世界最先端の都市を実装する「スーパーシティ構想」を検討中だが、新たな社会への変革に対応した規制体系の見直しが必要になろう。

規制改革推進会議の設置期限後には、土光臨調や行政改革審議会のように、規制改革、民営化、地方分権、行政機構改革等を幅広く「行政改革」として包含し、統合的に推進する第三者組織も検討すべきではないか。また、改革の継続性を維持していくための事務局体制も重要だ。さらに、改革を強力に推し進めるには、改革の哲学をわかりやすいキャッチフレーズにして、広く国民に浸透を図っていくことが欠かせない。

【産業政策本部】