経団連は12月7日、都内で都市・住宅政策委員会企画部会(安達博治部会長)・PPP推進部会(竹内俊一部会長)の合同会合を開催。シンガポール経済開発庁(EDB)のリー・チーハオ日本事務所長から、「シンガポールのスマートネーション構想とイノベーション・エコシステム」について説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ EDBのミッションと役割
シンガポールは独立後、産業構造の転換を伴い急速に発展してきた。変化に対応するため、海外からの技術移転だけでなく国内人材のスキルアップが常時求められ、これが現在のシンガポールのものづくり精神の基盤となっている。シンガポールは金融や保険の印象が強いが、今もエレクトロニクス、バイオメディカル、化学、成長著しい航空宇宙などの製造業がGDP比で最大を占める。
EDBのミッションは「ビジネスチャンス創造とGDPへの貢献」「よりよい雇用機会創出」であり、その達成に向け、「投資誘致」「産業育成」「ビジネス環境強化」に取り組んでいる。ビジネスのしやすさについて、例えば、法人新設手続きは15分以内にネット上で完了する。これは海外投資を呼び込む要因となっている。進出した多国籍企業は地域統括機能を置くのみならず、ブランド管理や実証実験も行っている。
■ スマートネーション構想とイノベーション・エコシステム
スマートネーションとは、5つの側面(交通、住環境、ビジネスの生産性、健康と高齢化、公共サービス)においてデジタル技術を活用し、国全体をスマートに変革するものである。
各側面のイノベーション喚起が重要であり、そのポイントは、(1)官民パートナーシップの推進(2)スタートアップ企業の成長加速(3)デジタルに特化した人材育成――である。(1)について、政府主導でマスタープランを策定、製造やサービスを提供する民間企業と連携して実証実験を行っている。(2)では、国が公的研究を強力に推進するとともに、新たなソリューションやビジネスモデルを模索するリビングラボを整備。また、スタートアップと大手企業、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)との協創を支えるエコシステムを構築し、イノベーションを加速している。(3)は、サイバーセキュリティを含め今後ますます重要になる。資源に乏しい小国シンガポールにとって、人材は唯一の資源である。経済を次のステップに進めるため、国を挙げて積極的に投資を行い、人材を育成していく。
シンガポールのイノベーション・エコシステムを総括すると、官民パートナーシップを土台に人材を育成し、自由度の高い環境で挑戦を行う。それにより一歩先の技術を涵養し、新たなスタートアップの開発につなげる好循環を目指すものである。
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意見交換では委員から、スタートアップ誘致のための規制緩和や、高齢化社会を見据えた生涯教育の取り組みについて質問。リー所長からは、海外人材の就労ビザ取得に関する規制緩和や永住権取得後の支援体制、国を挙げた生涯教育の取り組み等について紹介があった。
【産業政策本部】