Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月14日 No.3396  関西会員懇談会を開催 -「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けて

経団連は1月30日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。中西宏明会長はじめ審議員会議長、副会長らが出席し、関西地区からは会員約400名が参加。「『Society 5.0 for SDGs』の実現に向けて」を基本テーマに懇談した。

会合に先立ち、中西会長はじめ審議員会議長、副会長らは、関西経済連合会首脳とともに、2025年大阪・関西万博の開催地である大阪市此花区の夢洲を訪問。大阪府咲洲庁舎50階から夢洲を眺望しながら松井一郎大阪府知事、吉村洋文大阪市長から説明を聞いたうえで、現地を視察した。

関西会員懇談会の開会にあたり中西会長は、日本経済は安定成長を遂げているが、一方で国際情勢は不透明な状況であり、国際社会の安定と持続的な発展が求められると言及。そのうえで、経団連として(1)「Society 5.0 for SDGs」を中心とする成長戦略の実現(2)社会保障制度改革などの構造改革の推進(3)自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けた経済外交の推進――に取り組むとの決意を表明した。あわせて、大阪・関西万博の成功に向けて、経済界が一丸となって取り組んでいきたいと述べた。

■ 関西経済の活性化に向けて

「関西経済の活性化に向けて」をテーマとする懇談では、小林哲也近鉄グループホールディングス会長が、災害への備えの必要性に触れたうえで、地方分権改革や大阪・関西万博に向けたインフラ整備について述べた。また、村尾和俊西日本電信電話相談役は、大阪・関西万博を契機としたイノベーション創出やまちづくりの重要性を指摘した。

これに対し、(1)大阪・関西万博では、日本の技術力と知恵を世界に発信するだけでなく、参加者がアイデアを自由に出し合い、共有する「未来社会の実験場」としての役割を担うことを期待(古賀信行審議員会議長)(2)防災・減災ならびに国土強靱化に向けて、企業やサプライチェーン全体におけるBCP/BCMの構築が重要であり、とりわけ災害時の速やかなデータの共有・利活用が求められる(山内隆司副会長)(3)地域経済活性化を実効あるものとするためには、行政システムについて地方分権を推進することで、各地域が主体性をもって施策を展開できる体制を構築する必要がある(隅修三副会長)(4)ベンチャー・エコシステムの発展に向け、大手企業によるオープンイノベーションの定着・本格化や、リスクマネーの供給拡大が重要(岡本毅副会長)――と応じた。

■ 産業競争力強化に向けて

「産業競争力強化に向けて」をテーマとする懇談では、十河政則ダイキン工業社長兼CEOから、Society 5.0を諸外国に開かれたものにすべきだとの指摘があった。また、多田正世大日本住友製薬会長から、イノベーションを生み出す基礎研究の重要性や、社会保障費抑制について言及があった。

これに対し、(1)Society 5.0を通じてSDGs(持続可能な開発目標)を達成する「Society 5.0 for SDGs」を世界的に普及させるためには、プラットフォーム化と標準化に向け、日本がリーダーシップを発揮することが必要(十倉雅和副会長)(2)ビッグデータの活用により、国民の健康寿命の延伸、病気の治療に伴うQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上、医療費の適正化やヘルスケア産業の成長につながることを期待(岡本圀衞副会長)(3)イノベーションが沸き起こるような企業・組織を目指して、総合的な処遇改善としての人材育成と、多様な人材を活かすダイバーシティ経営に取り組むことが重要(工藤泰三副会長)(4)デジタル化の推進に向け、通常国会への提出が見込まれる「デジタルファースト関連法案」の早期成立や、地方自治体へのクラウドサービスの導入が求められる(小林健副会長)(5)グローバル・バリューチェーン全体を通じて、製品・サービス等のライフサイクルでの温室効果ガス排出削減に取り組むことは、わが国の産業競争力強化につながる(杉森務副会長)――との発言があった。

また、松本正義住友電気工業会長は、大阪・関西万博に向け、引き続き全国規模での機運を高めていきたいとしたうえで、経団連への協力を呼びかけた。

万博開催予定地の夢洲を視察する一行

会合に先立ち、大阪府咲洲庁舎で2025年日本国際博覧会協会の設立時社員総会・理事会が開催され、中西会長が同協会の会長に選任された。

中西会長が記者会見

懇談会後、中西会長が記者会見を行い、大阪・関西万博について次のとおり発言した。

大阪・関西万博では、経団連の最重要課題であるSociety 5.0 for SDGsの具体化を国内外に示していく。世の中が不確実で、どう動くか見通しにくいなか、従来の価値観が揺さぶられているともいえる。しかし、こうした時代だからこそ、技術を使いこなして、夢のある社会を創っていくことが重要である。これがSociety 5.0の最大のメッセージであり、大阪・関西万博の重要なターゲットでもある。この点について、政府、経団連、関経連が真剣に議論を行っている。経団連は昨年11月、Society 5.0の提言を取りまとめた。政府も未来投資会議で議論を進めている。関経連が策定した第3期中期計画も同じ方向性である。万博を通じて、こうした議論をどう具体化して、未来社会のコンセプトとして示していけるかが課題となる。万博を実験場とする見方もあるが、重要なことは、いかに良い提案ができるかである。ただ万博が成功すれば良いということではなく、万博後に何を残していくかも重要となる。この問題意識については、関経連を中心に経済界のなかで広く共有されている。万博はナショナルプロジェクトである。幅広く英知を結集し、いかに魅力的で、後世に残るプロジェクトとしていけるかが最大の課題である。

万博の費用のうち、経済界負担分400億円の集め方をよく問われるが、何も決まっていない。周りの経営者と話をしていて、万博について後ろ向きな方はほとんどいない。金額などが具体化してくるにつれ難しいことを言う向きもあろうが、それはある意味、経営者としては当たり前の反応であり、知恵を出しながら対応していくほかない。

【関西事務所、広報本部】