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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月21日 No.3397 「データドリブン化の推進でSociety 5.0を実現」 -ヤフーの川邊社長が講演/未来産業・技術委員会

説明する川邊社長

経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会(山西健一郎委員長、畑中好彦委員長、小野寺正委員長)を開催し、ヤフーの川邊健太郎社長から「産業のデータドリブン化について~なぜ今やらねばならないのか? 何をすべきなのか?」と題し、説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 自己紹介、ヤフーと経団連

大学2年の時、阪神大震災があって、平和ななかで人が突然亡くなる経験をした。その年の11月にWindows95が発売されたことを契機に、インターネットを用いた会社をおこした。5年後にヤフーに吸収合併され、今はヤフーの社長として、ヤフーをスマートフォンからデータの会社に変えようとしている。これからは、ITが既存産業に大きなインパクトを生むとの考えがあり、日本全体のIT化を推進していきたいと思っている。

■ データドリブンをめぐる現状

企業の時価総額の変遷を振り返ると、平成元年(1989年)は日本の時代だった。今は米中のIT企業が上位の大半を占めている。それは、グローバル化によって国境のない経済圏が登場し、デジタル化とネットワーク化が進んだからだ。

次の30年はどうなるだろうか。データドリブン化が1つのカギだと考えている。データの取得、AIによる分析、サービス提供、改善のデータドリブンにかかるサイクルがひとたび完成すると、他事業は参入が困難になる。

データドリブン化の価値は、リアルタイムで雑多かつ密度の濃いビッグデータをAI、ディープラーニングで分析することで、人間では導き出せない「気づき」が得られることにある。得られた「気づき」をネット企業は、サービスのパーソナライズ化に使っている。アマゾンのリコメンド、グーグルのトップ画面には個人の嗜好にあったものが表示される。

企業経営で考えると、前年比200%といった改善は人間の天才的なひらめきからしか生まれない。データドリブンの強みは、データから得た小さな「気づき」を改善に活かし続け、複利的な成長が期待できることにある。かのアインシュタインも宇宙で最も偉大な力は複利であると言っている。

■ AI・ディープラーニングの世界で何が起きているのか

技術の面では、従来のコンピューターとはまったく別物のコンピューターができつつあること、AIを進展させるコンピューターは急速に進化が進んでいること、画像分類や診断等の一部の分野では、すでに人間を超えていること等が挙げられる。それらを背景に、AI企業の既存産業への参入が始まっている。グーグルのリサーチに注目していると、医療分野や自動運転に注力していることは明確だ。

また、データが事業競争力の源泉になりつつある。AI企業はAI技術やソフトウエアをオープンにし、データを他社との差別化に用いている。

■ 日本や経団連はどうすべきか

AIの活用は、よいサービスを提供してデータを集め、それを分析してサービスをよりよくしていくというかたちをとることから、垂直統合型である必要がある。これからはデータ×AI化がすべての産業に波及する。日本にはチャンスだ。多くの既存産業でそれぞれ相当の世界シェアを獲得している日本がデータ×AI化すれば安泰ではないかと思う。

政策も動き始めている。デジタルファースト法案、具体的な実装の特区としてのスーパーシティ構想などがそれであり、引き続き経済界を後押ししてほしい。またプラットフォーム規制については、この問題が今後全産業共通の政策課題になるという共通認識のもと、日本市場における原則を確立していくことが重要である。

経団連には、規制緩和やインフラ整備、CDO(最高データ責任者)の明確化を政府に働きかけるとともに、提言やルールメークを通じて、企業のデータドリブン化の障害となっている商習慣を是正してほしい。また、安心安全のサイバーセキュリティーのスタンダードを合わせることも重要だ。全員のスタンダードを上げなければならない。加盟企業のデータドリブン化の推進によってSociety 5.0をつくり上げていきたい。

【産業技術本部】

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