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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月21日 No.3397 陸運・海運に関する最近の施策について聞く -運輸委員会

経団連は1月30日、都内で運輸委員会(武藤光一委員長、井阪隆一委員長)を開催した。国土交通省の奥田哲也自動車局長、水嶋智海事局長から、陸運・海運に関する最近の施策について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ トラック運送業に関する政府の最近の取り組み等について(国土交通省自動車局)

働き方改革を推進するなか、荷待ち・荷役がトラックドライバーの長時間労働の原因の1つになっている。荷主企業と運送事業者が一体となって荷待ち時間の削減、荷役作業の効率化などに取り組んでいく必要がある。

政府としても、自動車運送事業の働き方改革に向けて、昨年5月に関係省庁連絡会議において「政府行動計画」を策定し、労働生産性向上、多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化の3本柱で取り組んでいる。

また、2015年から「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」において長時間労働改善等に向けた検討を重ね、16年度および17年度の2カ年度にわたって全国で102のパイロット事業を実施。これらを踏まえ、「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」を取りまとめた。

さらに、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」での議論を踏まえ、運賃・料金を別建てで適切に収受するための標準約款の改正や、荷主・運送事業者双方の共通理解を促すためのガイドラインの策定などを行った。今後、関係省庁と連携し、これらのガイドライン等について、荷主・運送事業者双方に対して周知を図っていく。

また、咋年12月には、24年度から時間外労働の限度時間の設定がされること等を踏まえ、緊急に運転者の労働条件の改善等を図るため、貨物自動車運送事業法が議員立法で改正されたところであり、現在、施行に向けた準備を進めている。

今後は、物流の効率化や、運転者が働きやすい労働環境の実現を目指す「ホワイト物流」推進運動を展開していく。18年12月の運動方針決定を受け、詳細を詰めたうえで各企業等に運動への参加を呼びかける。参加企業には運動趣旨への賛同表明と自主行動宣言の提出・実施を要請し、運動の拡大・深化を図りたい。

また、高速道路におけるトラック隊列走行実現のため、咋年1月から、新東名高速道路等で実証実験を開始。課題を踏まえ、安全を確保しながら車両や道路インフラ等の技術開発を進めていく。

■ 海事分野における現状と取り組み(国土交通省海事局)

海運はわが国の国民経済を支える基盤であり、わが国の貿易の99.6%、国内貨物輸送の約4割を担う。外航海運では日本商船隊が世界の海上荷動量の約10%を占める。内航海運船員の高齢化が顕著であり、今後の事業継続に支障が出ぬよう、若年船員の確保・育成が必要である。また、造船業は現在世界3位にあり、国際競争が激化するなか専業社が健闘している。

国交省として展開中の「生産性革命プロジェクト」の1つとして「海事生産性革命」(i-Shipping & j-Ocean)を推進している。特に、人為的要因による海難事故の防止、船上の労働環境改善等の観点から、自動運航船の実現に取り組んでいる。当面は25年のフェーズⅡを目指し、データ解析技術やAI技術の活用により、船員の労働負荷低減やヒューマンエラー防止に取り組みたい。

環境規制への対応も重要である。国際海事機関における海洋汚染防止条約の改正により、20年から舶用燃料油中の硫黄分濃度規制(SOx規制)が0.5%以下へ強化される。規制に適合し、かつ品質性状を満たす燃料油の供給にはコスト増加が避けられない。海運事業では全コスト中、燃料費の割合が高く、経営に大きな影響が出ることが危惧される。

国交省は現在、関係省庁や関係業界と連携し、規制適合燃料油の安定供給の確保、需給・価格の安定化、燃料サーチャージ等ガイドラインの策定に取り組んでいる。SOx規制強化の目的は、地球規模での人の健康や環境の保護であり、そのコストは社会全体で負担する必要がある。

【産業政策本部】

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