経団連は3月25日、女性役員のさらなる活躍を応援する「経団連女性エグゼクティブ・ネットワーク」の活動の一環として、十倉雅和副会長(住友化学会長)をメンターに迎え、東京・大手町の経団連会館で「第14回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催した。37名の会員企業各社の女性役員が出席し、講演を聞いた。講演の要旨は次のとおり。
■ 住友の事業精神「自利利他公私一如」
住友化学は、創業以来、住友の事業精神である「自利利他公私一如」(自身を利するとともに、国家・社会を利するものでなければならない)という公益との調和を強く求める考えを大切にしてきた。これは、今でいうCSR(企業の社会的責任)やCSV(企業の共通価値の創造)、さらには、SDGs(持続可能な開発目標)やSociety 5.0の考えにも通じるものである。新中期経営計画「Change & Innovation 3.0」においても、「For a Sustainable Future」をスローガンに掲げ、Society 5.0を見据えたイノベーションの加速とデジタル革新による生産性の飛躍的向上を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献していくことを目指している。
■ 自らのキャリアで学んだこと
1974年に住友化学に入社し、業績管理・評価、予算策定を担当した。社内のさまざまな情報をいち早く入手できる部署だったが、当時の上司には、決しておごることなく謙虚な姿勢で対応することを教えられた。1980年代には、国際規模の総合化学会社への変革を検討する実務のリーダーの役割を与えられた。グローバル企業になるには、各事業の「多様性の尊重」と、激しい競争を勝ち抜くための「スピーディーな意思決定」が課題だった。そこで、「小さな本社」への組織改編を行い、権限と同時に責任をも事業部門に委譲する提案を行った。この提案が日の目を見るのは数年後になったが、正しいと思うことは積極的にビジョンを提案する姿勢が大切だということだけでなく、それを許してくれた当時の上司から、指揮官としての立ち居振る舞いを学んだ貴重な経験だった。
海外赴任を経た後、2000年代には、他社との統合準備に向けた実動部隊の責任者として、全社の組織・制度・機能についてさまざまな角度から検討した。他社との議論を通じて自社を俯瞰的にとらえることができ、また他社と比較した当社の強みや弱み、特性を客観的に分析できたことは大きな収穫となった。
■ 次代を担うリーダーへ
近年、多国間主義の衰退や、技術革新の波の到来、地球規模のサステナビリティー推進の動きなど、ビジネスを取り巻く環境が複雑化しているが、こうした時こそリスクをオポチュニティーに変えていくことが大切である。
次代を担うリーダーである皆さんには、「知らざるを知る」という姿勢を大切にしていただきたい。変化の激しい時代において、知らないことを謙虚に理解し、互いの立場を尊重することが重要である。また、リーダーとして組織を率いていくためには、明確なビジョンの提案と、人間的魅力を備えることが求められる。
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講演後、事業方針を策定するうえでの経営者としての考え方や、多様な人材とコミュニケーションを円滑にとる手法等について活発な意見交換が行われ、十倉副会長から多岐にわたるアドバイスが送られた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】